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人事マネジメント「解体新書」

経営戦略として「アウトソーシング」をどう有効活用していくか

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

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企業間の競争がますます激化してきた近年、経営のスピード化、市場ニーズへの迅速かつ柔軟な対応がよりいっそう求められてくるようになってきた。問題は、外部環境が著しく変化している中で、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などの経営資源について、自前(フルセット)で調達することが難しくなってきたことだ。特に、少子高齢化の問題もあって、「ヒト」の部分に対する対応策を急ぐ企業が多くなっている。このような観点から、社内のリソースを「選択・集中」し、他方で周辺業務や外部化できる業務はアウトソーシングしていく戦略が定着してきたのは周知のことだろう。ただ、その効果・効用と運用手法については、各社でかなりの差が見られる。今回は、経営戦略と連動したアウトソーシングのあり方について、そのポイントと活用事例を紹介していく。

なぜ、アウトソーシングが不可欠なのか

「外注」と「アウトソーシング」の違い

「アウトソーシング」とは、外部の専門的な知識やノウハウを有効に活用し、自社の目的とする業務に戦力を集中する戦略的な経営手段である。もちろん、以前から仕事を外部へ発注する、いわゆる「外注」は一般的に行われてきたが、アウトソーシングは次の点で外注とは異なる点をまず記しておく。

  • 外注:企画や立案については社内で行い、業務の遂行部分を外部に委託する
  • アウトソーシング:コア業務に集中するため、企画立案から業務遂行までトータルに委託する

「スピードある経営」を実現するために

先にアウトソーシングとは、トータルに外部委託することであると言ったが、委託する側からみれば「外部の機能や資源を有効に活用すること」に違いはない。しかしその目的を見ると、コスト削減といった消極的な理由もあれば、業務の流れの効率化や新たな付加価値を追求しようとする積極的な理由まで、その求めるところは多種多様である。ただ、近年は後者の意味合いが非常に強くなってきたのは間違いのないところだ。実は、10年ほど前のことであるが、アウトソーシングの大家と言われる方に話を伺ったとき、こんなことを言われた。今さらながら、実に先見の明がある言葉だと感じる。

『アウトソーシングを活用することで、「スピードある経営」の実現が可能となります。かつては生粋の従業員だけという企業が多かったのですが、今後は3割か4割は外部の人材を活用する、あるいは臨時で雇うという形が一般的となるでしょう。経営にスピード感が求められる時代にあっては、短期間で企業構造を変えていくために、本陣が頑固な岩みたいにガッチリしていてはダメなわけです。それより、柔軟性を持った組織形態を保つことが、これからの企業経営の特徴となると考えます。「オープンリソーセス」を活用していく時代にあっては、とにかく資源を広く求めていけばいい。常に外部を利用して、ある特定のところだけを優先していくという形態になっていくのです。企業はコアの仕事を担当し、自社はそれ以外の部分は専門家に頼んだほうが合理的です。経営のあり方についても、専門家集団の連合体のようなものになっていくのではないでしょうか』

思えば、アウトソーシングという言葉が一般的に言われるようになった当時、総務・経理業務や給与計算、福利厚生の代行、あるいは情報システム関連といった分野でのアウトソーシングが多かった。例えば、情報システムを新しくする時に、「情報システムを扱う人を新たに教育するのは大きなコスト負担が生じる。また、新しい情報システムを導入するのなら、そのシステムと同時に運用する人も含めて導入した方が効率的である」といった目的が大半だった。まずは、こうした考えからアウトソーシングは進んでいった。

自前主義からの脱却、拡大するアウトソーシング市場

ところが近年の状況を見ると、人事、営業、販売、マーケティングなど、会社組織の「中枢」に関わる部分にまで、アウトソーシングを利用する領域が広がっている。時代は変わり、自前主義から大きく外にリソースを求めるようになってきた。これも、昨今では企業にスピード対応が求められているからに他ならない。加えて、それを担う人材が非常に不足していることも大きい。

このような企業側のニーズを受け、アウトソーシング市場は大きく拡大していった。事実、ミック経済研究所の調査を見ると、近年、アウトソーシング市場は一貫して右肩上がりの増加傾向にある。2006年度の実績で既に5兆9308億円に達している(人材派遣を含む)が、それが2012年度には、何と9兆9290億円にまで拡大すると予測している。

図表1:アウトソーシング市場の推移

*出所:ミック経済研究所(2005年度、2006年度は実績値、2007年度以降は予測値 ※100億

れも、本格的なアウトソーサーが出現したことにより、今まで社内で行われていたほとんどの業務をアウトソーシングできる環境が整ってきたからである。図表2にその一例を示したが、これからの経営戦略とそのスピード対応を考えた場合、このような外部リソースの活用なくしては組織が成り立たない状態にある。

図表2:アウトソーシング関連ビジネス分野と主なサービス
分野 主なサービス
人事・教育関連
人事関連業務 給与計算、人事制度策定、人事管理、人事情報システム構築、出向者管理請負、社会保険関連業務代行
人材教育 能力開発、社員研修、自己啓発支援、生涯教育、通信教育・eラーニング、国内外留学
人材マネジメント アセスメント、人材派遣・紹介予定派遣、採用・面接・選考代行、会社説明会、内定管理・フォロー、アウトプレースメント、カウンセリング・コーチング
総務・経理・福利厚生関連
総務 ファイリング、オフィス什器・備品、購買業務代行、出張関連業務代行、自家用自動車管理・運転代行
経理 記帳・月次決算代行、出納業務代行、資産管理
福利厚生 従業員健康支援・メタボリックサービス(健康相談、健康増進)、メンタルヘルス・EAPサポート、旅行サービス、宿泊・飲食施設等の割引サービス、企業内保育所運営、冠婚葬祭サービス、保険・年金サービス、401k、リロケーションサービス
給食・社宅・寮管理 社員寮・社宅の管理運営、社員食堂の管理運営
経営・情報(IT)関連
経営・コンサルティング 企業戦略立案、投資相談、財務分析、取引先企業分析、市場調査、シンクタンク・コンサルティング
情報システム(IT) システム企画・設計・運営・保守、情報処理、データベース管理
情報提供 情報検索、データベース提供、海外情報・データサービス、企業の経営情報・データ提供
営業・販売・マーケティング関連 営業・販売業務代行、広告代理、カスタマーサービス、テレマーケティング、ダイレクトマーケティング、SP、DM
製造関連 開発・設計、部材調達、生産工程の請負
物流関連 トランクルーム、文書保管、棚卸し代行、受発注管理、急送サービス・バイク便、国際宅配便
施設関連 オフィス環境整備・改善、ファシリティマネジメント、ペストコントロール・害虫駆除、セキュリティ管理
その他 産業廃棄物処理、ATMの設置・運営代行、行事・イベント等の企画・運営

アウトソーシングを導入する理由

とはいえ、各社の置かれた立場や企業戦略により、アウトソーシングを導入する目的はさまざまである。一般的に言って、アウトソーシングへ期待されている理由には、以下のようなものが考えられる。

  • コストの削減
  • 業務のスピード化
  • 固定費の変動費化
  • 専門性の向上
  • 本業への集中
  • リスクの分散
  • 人材不足の解消
  • 組織のスリム化
  • 時短
  • 顧客サービスの向上
  • 新規分野の進出
  • キャッシュフローの改善
  • 事業の再構築(リストラ) など

少し古いデータで恐縮だが、ニュービジネス協議会が行った調査でアウトソーシングしている理由とその効果について尋ねている。その結果を見ると、「専門性の向上」や「業務のスピード化」「コストの削減」「固定費の変動費化」といった項目については、7割以上が「効果あり」とのこと。これらについては、多くの企業で期待した効果が出ていると考えられる。

逆に、「新規分野の進出」や「キャッシュフローの改善」などは、その効果が短期間に出にくい性質もあってか、期待するほどの評価は得られていない。また、「事業の再構築(リストラ)」を目的としたアウトソーシングは、「効果あり」としている企業が半数ある一方で、「効果なし」という答えも少なくなく、評価が分かれている。

どうやら期待する効果は、その目的により一様ではなさそうだ。当然のことだが、業種・業態、職種・仕事内容、人材の質・量によっても大きく異なってくる。その費用対効果については、事前に詳しくシミュレーションする必要があるだろう。

何をアウトソーシングしていくべきか

自社の「強み」と「人材(リソース)」を見極め、アウトソースする内容を決める

次に、何をアウトソーシングするかについて考えてみたい。先に見た調査では、「どの分野をアウトソーシングしているか」についても聞いている。その結果は、「従業員の教育・研修」が最も多く、以下、「情報システム」「生産工程」「会計・経理・税務」と続いている。ただ、経営の中枢である「経営企画」は低い数字となっていた。やはり「経営企画」はコア業務と考え、ストック型の人材が対応すべきだとしているようだ。

注目されるのは、「今後活用したい分野は何か」への回答。「営業」への期待が高くなっている点だ。さまざまある業務の中でも、“攻め”の部分に対する期待感があるのだろう。さらに「経営企画」についても、もし自社だけの人材で十分ではないと判断すれば、この先は分からないと推測される。オープンリソースの質量が十分に提供されてきた現在にあっては、以下に記したように、コア業務についてもアウトソーシングを活用していこうとする企業が増えてきていると思われる。

  • 『自社でなくても可能な業務である→それなら、外部の専門性を活用したほうが効率は良い』
  • 『戦略に関わる内容のため、外部化しにくい業務である→企業の生き残りをかけ、戦略部分を強化していくには、外部のパワー・ノウハウを取り入れることが不可欠である』

いずれにしても、「自社の強みと人材(リソース)を見極め、進むべき方向の中で何をアウトソーシングし、何を自社に残すのがベストの選択であるのか」という観点から、社内にある業務を洗い出し、それらについて的確に確認しチェックしていくことが、アウトソーシングを導入する際の大きなポイントとなる。

例えば、自社が以下のような状況にあったり、問題を抱えているのならば、アウトソーシングを検討してみる価値があるだろう。

(1)「職場環境」の整備ができていない
  • オフィス環境の維持・改善ができていない
  • 社員のメンタルヘルス管理に問題がある、不具合が生じている
  • 社員間のコミュニケーション不足、人間関係の調整が必要と感じられる
(2)「勤怠管理」が大変である、滞っている
  • オフィス環境の維持・改善ができていない
  • 社員のメンタルヘルス管理に問題がある、不具合が生じている
  • 社員間のコミュニケーション不足、人間関係の調整が必要と感じられる
(3)定型化した「ノウハウ」がない
  • 仕事の進め方が確立されていない、その都度ということが多い
  • マニュアルを作成する際に多大なパワーがかかる、ノウハウを持っていない
  • 業務の分析・再定義を行いたいが、具体的な進め方がよく分からない
(4)「人」が足りない、「時間」がない
  • 社員の多くがトラブル対応/顧客管理/メンバー対応/関連部署対応/コスト管理/経営への対応など抱える領域が広くなっており、注力すべき業務に着手できない
  • 業務の改善を行いたいが、日常業務に追われてなかなか進まない
  • 人員を減らしながら、業務の質を維持・向上しなければならない
  • 絶対的なマンパワーが不足している
(5)「人材」が育っていない
  • 教育プランの作成や指導にかかるパワーが足りない
  • 人が入れ替わるたびに、教育問題が発生する
  • 新規事業・分野に進出する際、適当な人材が見当たらない
(6)「人員計画/採用」が大変である
  • 採用(面接)にかかる時間・コストが多大となっている
  • 契約更新にかかる時間・コストが負担となっている

定型的な作業から、ストック型人材を解放させる

ここで具体的なイメージを持ってもらうために、人事部門を例に考えてみよう。人事という仕事の性質上、法律に準拠する作業がさまざまあり、煩雑な定型業務が数多く存在する。しかし、本来的には経営戦略から導き出された人事戦略を立案・実行するのが人事部のミッションのはず。ならば、それを担う人材には、定型的な事務作業から開放し、生産的でかつ戦略的な仕事に特化させることが肝心ではないだろうか。もちろん、他部門においてもこうした考え方が重要なのは言うまでもない。

要は、社内にある業務について、「外部化ができるかどうか」「本来やるべき内容かどうか」「外部の力を借りた方が、相乗効果が期待できるか」「内部でできる人材がいるかどうか」「コアであるべき人材に、余計な負荷がかかっていないか」といった視点で見直し、問い直していくことがアウトソーシングを成功させるポイントとなってくる。

だから、マネジメントを担ってもらうストック型人材に対しては、本来やるべき業務で、常に力を発揮し続けさせるようにしていくことだ。まさに、そのためにアウトソーシングを活用するのであって、こうした外部リソースをうまく活用できるかどうかが、今後の企業の浮沈に大きく関わってくる。

「戦略部門」もアウトソーシングする時代に

とはいえ、これからは様相が違ってくる。「戦略部門」に関する業務についても、アウトソーシングすることが十分可能だと考えるからだ。一般的に、価値創造・企画立案など戦略を担当する部門については、もっぱらコアとなる社員が担当していた。これまでアウトソーサーという非雇用の外部労働力を活用するという発想は、あまりなかったように思う。それは一部、弁護士や税理士、会計士などの有資格者、あるいはデザイナーなどクリエイティブ職などに限って活用されていた。

ところが、人材の流動化、雇用の多様化に伴い、IC(インディペンデント・コントラクター)など、専門性の高いホワイトカラー人材が企業と業務委託契約を結ぶケースが出てきた。実際、人事部長などスタッフ部門の要職をアウトソースするベンチャー企業は多い。また、コンサルティングファームがアウトソーサーとして戦略部門の中枢を担ったり、新規プロジェクトをそのまま請け負ったりするようなケースも多々見られるようになった。

これも前述したように、経営や技術革新のスピード化などが予想以上に速くなり、自社の人材でまかなったり、育てていったりすることが難しくなってきたからである。さらに、グローバル化への対応や少子高齢化の進展による人材難の影響も大きい。

それだったら、信頼の置けるパートナーと協同で進めていった方が得策だと考える企業が増えてくるのも当然のことだろう。まさに、経営戦略を確実に実行するにあたって、アウトソーシングがなくてはならない時代となってきたのだ。

優れたアウトソーサーのポイント

そのような意味からも、優れたアウトソーサーをパートナーとすることがこれからのアウトソーシング導入のポイントとなる。いくら自社でアウトソーシングする対象業務やその具体的な内容をリストアップしても、それを受け入れてくれて、かつ信頼に足るアウトソーサーがいなければ、成功には程遠い。

また、アウトソーサーを選定する場合、任せる業務内容にもよるが、自社に適した相手かどうかを吟味することも大事である。以下に、一般的なアウトソーサーとしての必要条件をまとめてみた。

  • 自社の「経営戦略」を正しく理解している
  • 自社と「協力・協同関係」を築いていこうとする姿勢が強い
  • 専門分野における「技術水準」が高い
  • 「生産性向上」に対するノウハウがある
  • 「コスト削減」に対するノウハウがある
  • 機密保持など「信頼性」が高い
  • 「情報共有化」の仕組みができている
  • 担当者の「熱意・インテリジェンス」を強く感じる
  • 自社の「企業風土・文化」との相性がマッチしている
  • 「費用」が適正範囲にある
  • 一定レベルの「実績」がある
  • 「顧客数」が適正である。あまり多すぎない

これらの条件以外にも、積極的に相手先の情報を収集し、担当者やプロジェクトリーダーとの面談・交渉を重ね、見極めていくことが重要である。いずれにしても、自社の一連の業務を棚卸ししていく中で、自社にとってあるべきアウトソーシングの形が見えてくるはずである。

アウトソーシング活用の「ケーススタディ」

では、ここから具体的なアウトソーシング活用の事例を見ていくとしよう。ケースとして「新卒採用」と「営業」を取り上げたが、アウトソーシングを活用していくことにより、いかに課題を解決していったのかを知ってほしい。

(1)新卒採用で、業務を外部と適正に分担

流通業(従業員数3000人)
全国で100人を超える新卒採用を展開しているが、これまでは担当者が3人で各地を回り、説明会やセミナー・面接をこなしていた。しかし、3人では集中できるエリアと対象が限られてしまうため、ここ数年は同業他社に遅れを取る状態が続いていた。

【課題】均一な採用活動の「質」を保つ必要性に迫られていた
採用担当者3人でこなせる仕事量は限られている。正直、この人数で全国を行き交って情報を取りまとめ、それを効率的な採用活動へと結び付けていくことは難しい。事実、採用の早期化が進む中、学生との接触が遅れてしまっていた。このような状況を打開するため、採用業務の思い切ったアウトソーシングを行った。

【対応】「絞りと集中」を実践し、採用効率を向上させていく
とにかく、人間が1人でできる業務には限界がある。特に、採用活動では何に最も力点を置き、どれだけ集中できるかが重要になってくる。期間の限られた中、マンパワーを要するものと、そうでないものとを分類し、より専門的な仕事にコアスタッフを配置していく。そのような観点から一連の採用業務について細かく棚卸しを行い、外部化すべきものをピックアップ、アウトソーシングしていった。まさに、「第2人事部」を持つような格好である。

段階 自社が行う業務 アウトソーシングした業務
採用準備
  • 採用スペック、求める人物像の設定
  • 募集メディア、採用エージェントの選定
  • 選考スケジュールの設定
  • 採用コミュニケーションツールの準備
  • 採用管理用のデータベース作成
  • 選考基準関連書類の作成
採用母集団の形成
  • 募集原稿の作成
  • 応募者受付(電話・郵送・メール)
  • 応募書類の管理、データベース入力
  • 応募者に対するメールの発送
  • 採用エージェントへの依頼
  • 説明会、1次面接への呼び込み
1次選考
  • 書類選考
  • 説明会の実施
  • 1次面接の実施
  • 面接スケジュールの調整
  • 面接予定表の作成
  • 面接資料の準備、作成
  • 面接結果のデータベース入力
  • 面接結果の応募者への連絡・フォロー
内定管理・入社
  • 内定者フォロー
  • 雇用条件の説明・交渉
  • 内定通知の発送・フォロー
  • 内定事務手続き
総括
  • 振り返りミーティング
  • 採用結果の分析・レポート作成

【振り返り】全体の採用レベルが向上、結果も出てきた
採用アウトソーサーへ業務委託したことにより、3人で全国を回っていた頃と比べると、全体の採用レベルは飛躍的に向上した。これも、アウトソーサーとの連絡を取る一方で、担当者が学生と向き合ってじっくりと選考に臨むことができるようになったからだ。その結果、本来やるべきことに専念でき、採用活動全体で納得のいく成果を確実に出せるようになった。

(2)営業アウトソーシングでSFAを活用

情報機器メーカー(従業員数500人)
新商品の拡販に当たって市場が急激に拡大していく中、社内の営業部隊だけではとても対応できないこともあって、以前から派遣スタッフを活用していた。しかし、東京、名古屋、広島、福岡、札幌と全国にまたがる派遣スタッフの業務管理や勤怠管理に対する負荷が予想以上に大きく、このことが社員の大きな負担となっていた。

【課題】スタッフを効率よくマネジメントできる体制の構築
これまで営業部隊では、一連の営業プロセスを派遣スタッフ各々が担当していたために、営業効率が悪く、思うような成果が上がらなかった。加えて、東京、名古屋、広島、福岡、札幌と幅広いエリアにまたがるスタッフのマネジメント負荷が大きな課題となっていた。

【対応】外部リソースとSFAで効率的な営業組織、システム構築を実現
こうした効率の悪い状況を打破するためには、とにかくマネジメントのあり方を何とかしないといけないと考えた。そこで、マネジメントも外注できる「営業アウトソーシング」を導入することを決めた。その際にSFAを取り入れ、営業部門の情報武装化を行った。これにより、営業プロセスの標準化や業務効率化を促し、効率的なスタッフマネジメントを行うことを目指した。

具体的には、従来の営業プロセスや顧客セグメントを見直し、人手をかけなくてもよいプロセスをマーケティングシステムへと置き換えていった。例えば、新規アポイントの獲得は専門のマーケティングスタッフが行い、営業スタッフはそのアポイントに基づいて顧客を訪問するといったことを進めていった。何より、現場の情報をスピーディーに本部にフィードバックできるので、営業効率や即時対応性といった面での向上が大きく図られた。

また、携帯端末を用いることで、会社のシステムに容易にアクセスすることができるようになった。必要な情報も瞬時に取り出すことが可能となり、今後に向けての提案型営業が実現可能となってきた。

【振り返り】ブラックボックス化していたスキル・知識も共有化
営業職においては、ITの活用とその標準化がこれからは強く求められてくる。今回のケースでは、既に基本的な営業スキルやIT関連の知識を持った外部のスタッフを効果的に活用したことで、その移行がよりスムースに行われた。

さらに、従来はブラックボックス化していた営業職のスキル・知識を共有化することができ、各人の営業力を平準化させる良いきっかけともなった。外部の営業力とSFAの活用により、効率的な営業組織とシステムの構築を早期に実現することに成功したケースである。

アウトソーシング実施上の「留意点」

「人」が行うがゆえに、モチベーション管理が大切となる

アウトソーシングするといっても、自社と切り離して別会社化するわけではない。あくまで、自社の業務に外部パワーを活用していくのである。仮に、アウトソーシングされている部門が本来の目的から離れてしまい、好き勝手なことをやっているというのは最悪の状態である。相互のコミュニケーションは円滑にしながら、その業務を切り出していく、これがアウトソーシングの狙いの根幹なのだから。

その時に気をつけておきたいのが、アウトソーシングは「人」が行っているということ。「機械」や「システム」が自動的に行っているのではないのだ。だからこそ、コミュニケーションをスムーズに行うことが、アウトソーシングを行う際に大きな鍵を握ってくる。そのためにも、アウトソーシングを担当する人たちが前向きな姿勢で業務を行えているかどうかといったモチベーション管理、あるいは職場の環境づくりといったことがとても重要になってくる。そこに、アウトソーシングがうまく機能するかどうかのポイントがあると思う。

「職場型モチベーション」を向上させる

実際問題として考えてほしい。社員が伝票の入力、チェックなどの事務処理ばかりを毎日行っていると、単調な業務に無気力となり、モチベーションダウンへとつながりかねない。しかし、それをアウトソーシングした場合、同じ業務でも専業のアウトソーサーならモチベーションを高くもって、遂行することが可能となるのだ。

つまり、モチベートできている人をあてがえば、単調な仕事であっても、その仕事を改善しようという創意工夫を行い、いわば“小集団活動”的なアプローチが働いていく。ところが社員の場合だと、こういう志向はなかなか持てないのが現実ではないか。まさに、人が変わることで仕事のあり様や職場の雰囲気が変わるというのも、アウトソーシングの“妙”と言えよう。

結局、アウトソーシングにおける生産性向上の要因とは、単に業務を切り詰めることではなく、働く人の意識の問題が大きなウエートを占めてくるということ。要は、いかにモチベーションを上げる働き掛けを用意できるかということである。これにより目に見えるプラスαが生じ、その影響力たるや計り知れないものが出てくる。実際の運用に際しては、ここで示したような「職場型モチベーション」を向上させることがとても重要だと考える。だからアウトソーシングを導入する際には、ぜひともこの点についてのアウトソーサーの考えを聞いてみることをお勧めする。

「コーソーシング」で、新たな価値創出を目指す

この先、アウトソーシングはその注目度が高まるとともに、コスト削減など単純なものから、戦略性を強めたものへと変化していくだろう。そこでは、相互に信頼関係を築き、共同作業として行うべく「パートナーシップ」が欠かせない条件となってくる。なぜなら、業務に「人」が大きく介在する以上、「機械」や「システム」ではなく、感情をもった「人」として扱っていかなければうまくいくはずはないし、何より彼らのモチベーションに大きく影響してくる。その結果、生産性も大きく違ってくるはずだ。

アウトソーシングで失敗する場合は、その目的がはっきりしていないために、現実的な設計ができていないというケースが非常に多いように思う。それこそアウトソーシングした後に、アウトソースした部分がブラックボックス化してしまうとか、委託側が供給側をコントロールできないなど、さまざまな弊害を生んでしまっている。これではせっかくアウトソーシングした意味がない。

だからこそ、相手とのパートナーシップや協力関係がとても大切になってくる。このスタンスこそが、アウトソーシングを成功に導く絶対的な条件であると言えよう。その意味から考えると、今後は「アウトソーシング」というよりも、「コーソーシング」という考え方がとても重要になってくるのではないか。顧客と業務を請け負う側の双方が、戦略・基本設計から標準化、さらにはリスクを共有することにより、新たな付加価値の創出が可能になっていくことだろう。


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