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人事マネジメント「解体新書」第13回
「長時間労働」をいかに是正していくか

長時間労働の是正へどのように取り組むか

◆長時間労働を是正するためのアプローチ

長時間労働の原因は多様であり、その対応は一様でないと言った。しかし、何とかして是正していかなければならないのは衆目の一致するところである。具体的に、長時間労働を解消するためにはどのように取り組んでいけばいいのか、幾つかの切り口からその突破口を考えてみたい。

(1)「社風・職場風土」の改革・改善~トップが宣言し、自ら行動で示す

長時間労働の是正、時短が進まない理由として第1に抑えておきたいのが、「社風」や「職場風土」の問題である。近年、成果主義を導入する企業が増えたとはいっても、相変わらず「長時間働くことで評価される」と考える社員は少なくない。やっかいなのは、長時間働く社風や職場風土が「強み」だと認識している人がまだまだいること。まずは、このような雰囲気を払拭していかなければ、時短を進めていくのは難しい。

これは社風・職場風土の改革・改善であるわけだから、トップが率先垂範して取り組まなければならない。「早く帰ることはいいことだ」「早く帰るのは優秀な社員である」ということを宣言し、目に見える形で実行に移していくこと。事実、中小企業やベンチャー企業では、定時になるとトップ自らが消灯していくやり方などがよく見られるが、大企業でも各職場の長となる人が同様のことを行えばいい。

地味な行動ではあるが、とにかく一定期間継続していくことで、職場のメンバーに早く帰る癖をつけさせることが重要である。もし難しければ、「ノー残業デー」を決めて、そこから始めてもいい。要は、リーダーとなる人が自ら行動で示していき、いつまでもダラダラと机に向かって仕事をしているのは「悪」であるという雰囲気を作ることがポイントである。有給休暇の取得などでもそれは同じだ。

(2)仕事の「分析」と適正な「配分」~仕事を効率よくこなすノウハウを、組織全体で共有する

先の調査結果で見たように、長時間労働となる最大の理由は「仕事量が多いから」というものだった。特に、長年新卒採用を手控えてきた組織では、年齢構成がいびつになっており、マネジメントの任にあるべき人があらゆるレベルの仕事を任されている職場が少なくない。仕事のできる人は特にそうである。こうした場合、多すぎる仕事量を調整する抜本的な対応をしなくてはならない。

そのためには仕事を「質」と「量」の両面から分析することである。いまある仕事量を適切にこなしていくには、どのような能力・スキルを持った人がどの程度必要なのか。それと、現状との間にはどの程度の乖離があり、そのギャップを解消していくにはどのような人員配置や取り組みが必要となるのかを考えていく。よくある職務分析の手法を使えばいい。そして、できる限り現場の声と要望を聞きながら、要員計画なりを立てていくことである。また、なぜ効率が悪いのか、特定の人に仕事が集中していないかなど、原因の追究もしっかりとしておくことも忘れてはいけない。

さらに、全社規模で労働時間を把握し、世間一般の平均値と比較した場合のズレや、それにより起こっている問題点などを明らかにし、広報していくこともぜひやるべきである。そうすることにより、社員各自が自らの考え方や実態を客観的、相対的に認識していき、行動にも必ずや変化が現れてくるはずである。

このようなアプローチを繰り返していくことによって、効率よく仕事をこなすノウハウを組織全体で共有化していくことができる。さらには、組織内における仕事理解が深まっていくことだろう。すると、1人で何役もこなせる“多能工”をホワイトカラーでも実現していくことが可能となってくるかもしれない。

最近のサッカーを例に取れば、複数のポジションをこなせる“ポリバレント”な(多様性を持った)選手がチームプレーにおいて、何より勝負事において重宝されるようになってきている。多能工が多い職場では、自分の代わりとなる人が存在することで安心して仕事を任せられるし、休みたいときに休むことができる。皆が多能工化することにより、職場に信頼と安心感が生まれ、より相応しい労働環境へと導いてくれるに違いない。

仕事が細分化されている現在、そんな“夢のような職場”はまだ先のことかもしれないが、とにもかくにも、部下の業務をきちんと把握するのは上司の重要な役割であるのは間違いない。忙しくてそれができないなどと言うのは管理職失格である。

(3)仕事の「見える化」の推進~派遣スタッフやアルバイト・パートの多い職場で効果的

(2)の仕事の「分析」と適正な「配分」とも関係してくるが、仕事を「見える化」するというアプローチが最近はやりである。例えば、ある仕事について、その内容と処理プロセス・流れを書き出し、誰がどの程度できるかを記した「仕事習熟表」を作成し、それを見比べながら適正に仕事を割り振っていくという方法だ。特に、派遣スタッフやアルバイト・パートを活用することの多い職場では、こうした見える化を活用した方法が効果的と思われる。

仕事を可視化することで、特定の人が仕事を抱え込むことが少なくなる。自分でしかできないと思っていた仕事が、実は分担が可能で、その結果、生産性が大きく向上していくことを全員が理解するようになれば、チームとしての生産性もアップし、必ずや時短も進んでいくことであろう。

(4)「有給休暇」の積極的取得~強制的に休む日を先に決めてしまう

諸外国と比較して、日本は有給休暇の取得日数が非常に少ない。欧米ではそのほとんどを消化するのに対して、日本では付与日数20日に対して平均8.5日と、半分も消化していない(厚生労働省調べ)。例えば、この有給休暇を5日取得すれば、それは年間で40時間分の労働時間が削減されたことになる。ちなみに、所定外労働時間を40時間減らすのには、1日に2時間の削減を20回繰り返すことと同じである。これをやるのは結構しんどい。このような例からも分かるように、有給休暇の消化率を上げることは、時短に非常に大きな効果がある。

具体的には、年度の初めに「有給休暇の計画的取得日」を会社と個人の双方で事前に何日かを指定してしまう方法がいい。とにかく、強制的に休む日としてしまうのだ。例えば、個人では誕生日や結婚記念日、家族行事、ボランティア参加などの特定の日を指定する。目的を持って休暇を取得することにより、仕事と生活のバランスも取れ、個人の生活も豊かになっていくだろう。このような方法は、実務的にはそれほど難しいものではない。ワークライフバランスを実現していくためにも、もっと採用すべきことだと思っている。

(5)「所定時間外労働」の一定時間到達時における強制的代休取得~「ルール違反」を公式に謳う

黙っていると増えていく一方の残業を減らすために、1ヵ月の残業と休日出勤を合計した「所定時間外労働」が一定時間に到達した際、代休などを強制的に取らせることを就業規則に明記し制度化する、という方法がある。残業過多は「ルール違反」であることを公式に謳うことで、働き方・働かせ方を見直させ、時間外労働削減につなげていくのだ。あるいは、残業の「事前許可制」などの方法でも一定の効果が期待できる。

重要なのは、残業というのは「問題行為」であることを制度として明確に示し、社内に徹底させていくことである。


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