企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事マネジメント「解体新書」

第11回:「ナレッジマネジメント」活用で強い組織を作る

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「ナレッジマネジメント」とは、個人の持つ「ナレッジ」を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を向上させていく経営手法であり、近年、対応を急ぐ企業が増えている。というのもナレッジマネジメントを浸透させることによって、個人の能力の育成や組織全体の生産性の向上、意思決定のスピード化の実現、業務効率の改善など、その期待される「果実」が思いのほか多いからである。ただ、多くの企業が取り組んでいるものの、成功例はあまり多くないように聞く。これは多分に、ナレッジマネジメントの本来の意味を取り違えたり、組織に運用のスキルやノウハウが定着していないことに原因があるからではないだろうか。今回は、成功するためのナレッジマネジメントのあり方について、そのポイントを整理してみた。

「ナレッジワーク」の時代が到来!

「価値」を創造する仕事へのパラダイムシフトが起きている

近年、組織の中における「仕事」の中身が大きく変わってきている。それは、単に経営環境が変化しグローバル化やネットワーク化が進んできたからということではなく、もっと本質的な部分で仕事に求められるものが変化してきたからである。特に、ホワイトカラーにおいては仕事のパラダイムシフトが起きており、従来の作業中心の静的でアドミニ的な仕事から、動的でかつ今までにない価値を創造する仕事へのシフトが一気に進んできた。端的に言えば、イノベーションを起こし価値を継続的に生み出していける人材こそが、これからの時代、まさに求められているのだ。

そこでキーワードとなるのが、「ナレッジ」である。現代は不確定要素が多く、頼るべき前例(モデル)がないから、戦略的なリーダーシップや自発的な行動がポイントとなってくる。その際の拠り所となるナレッジをあらゆる角度から集め、分析し、判断し、遂行するプロセスを見守りながら結果を出していくといった、いわばプロジェクトマネジメント的なスタイルへと仕事が変わってきた。従来型の仕事スタイルから、「ナレッジワーク」への転換ということだ。事実、ナレッジワークの仕事社会では、一個人が生み出す価値が組織の屋台骨を支えるようなケースが数多く出てきている。

このように現代はドラッカーが予測した「知識社会」になってきたわけで、「ナレッジワーカー(知識労働者)」は企業に対して単なる労働を提供する者ではなく、ナレッジという生産手段を所有する存在となっている。故に知識社会では、皆がまさにドラッカーの言うナレッジワーカーであることが強く求められているのである。

「知識」「知恵」で勝負する時代

思い返してみると、少し前の高度成長期の工業化社会では、必ずしもそうではなかった。この時代のホワイトカラー(あえてマニュアルワーカーと呼んでいいだろう)にとっては、とにかく与えられたテーマや課題を効率よくこなすことが求められていたし、その達成のためにマニュアルに基づく教育や、働いた時間・量で評価するという均質的・画一的なマネジメントが長い間行われていた。また、手続き、ルールを遵守することが第一であった。何より働き方のレールが敷かれていて、求められること以外あまり余計なことは考えなくていいという慣わしだったから、ある意味、幸せな時代だったかもしれない。

それに対して、現代のナレッジワーカーには新しい価値を生み出すことが求められている。そのためには自ら課題を設定し、かつ対応し得る能力が欠かせないわけで、結果としてのアウトプットの質(どのような貢献度・成果を上げられたか)も今まで以上に問われることになった。

そう考えると、新しい時代の仕事には、自ら「考え」そして価値を「生み出す」ことが大命題として付与されており、ホワイトカラーは本当の意味で「知識」や「知恵」によって勝負する時代へと入ってきたと言えるだろう。

「コスト競争」から「価値競争」へ

そして、知識や知恵が求められる状況下においては、人材の差から生じる価値の差が、企業にとっての競争力の源となってきた。採用難の時代、人事担当者はこのことを強く意識してほしい。さらに、人材をどのレベルに位置付けるかによって、競争の舞台の様相も異なってくることにも注意したい。人材を代替可能な「人手」と考えるのか、唯一無二の「資源」「資産」と考えるのかで戦略は異なり、企業の行方は大きく変わってくるからだ。

(1)「人材=人手」と考えるレベル
人件費の安価な国・企業との価格競争へ突入していく

(2)「人材=資源」と考えるレベル
グローバル競争の舞台へとデビューしていく

(3)「人材=資産」と考えるレベル
グローバル競争の“勝者”となり得る

やはり、不毛な「コスト競争」は回避したい。というよりも、ほとんどの日本企業はこの先、この分野で勝負に勝つことは不可能だろう。今後とも続くグローバル競争を勝ち抜くためにも、人材を貴重な資源・資産と考え、育成し、その人材が価値を生み出していける仕組みを構築していく。だからこそ、社内にいる人材の価値を高め、競争力を高めていくことが、これからの人事マネジメントにおいて重要な課題となっている。

知識社会における「人材育成」の方向性

確かに、高度成長期時代のような工業化社会においては、効率的な人材育成が必要とされた。そこではマニュアルによる標準化やきめ細かなOJT、階層別の研修などが行われ、画一的ではあるものの、組織にとって活用しやすい均質な人材を育てる仕組みが確立されていった。事実、こうした日本的経営が賞賛された時代もあった。

ただ、このような滅私奉公的な人材育成システムが、これからの知識社会において今後とも有効となり得るだろうか?いや、そうではないだろう。激しい環境変化に対応し、国際間、企業間の競争に打ち勝っていくためには、個人が他にない価値を生み出す力が必要となる。その力というものを、マニュアルや階層別研修などで育てることは容易ではない。

実際問題として、人員が余剰になっている企業でも、技術力、企画力、提案力などの価値を生み出す専門性を持った人材は常に不足している。ナレッジを有効に使い、価値を創造できるナレッジワーカーをいかに生み出していけるか。そのための組織として仕組みを考え、適切に運用していくことが、これからの知識社会における人材育成の方向性であることは間違いない。

「ナレッジマネジメント」をどう捉えるか?

「ナレッジ」とは何か?

ナレッジマネジメント云々を言う前に、そもそも前提となる「ナレッジ」について、少し考えてみたい。一般的にナレッジは「知識」と訳されるが、似たような言葉がこの他にも存在する。

まずは、「データ」。データは単に事実を示したものであり、これは「売上がいくら」といった事実を定量的に表現したものと言える。次に「情報」がある。情報とは、データをある目的のために意図を持って整理・加工したものである。例えば、売上を月別や品目別など目的を持って集計したものが情報となるわけだ。そして情報を収集し、分析し、何らかの判断を下すための材料へと加工したものが「知識」と呼ばれる。さらにその上に「知恵」という言葉がある。この知恵とは、いろいろなプロセスや経験を経て、知識の集大成として得られた「知見」のようなものと言えるだろう。

これまでの工業化社会では主に「データ」と「情報」を拠り所としたわけだが、これからの知識社会では価値を生む素材・材料としての「知識」、さらには価値創造の源となる「知恵」が極めて重要になってくる。

つまり、ナレッジマネジメントの「ナレッジ」とは、従来の情報システムの対象であったデータや情報から、新たに知識や知恵を加えたものが対象となり、さらにそれをいかに個人と組織が有用に使える形へと持っていくのかがナレッジマネジメントということになる。

図1:ナレッジを構成する要素

「暗黙知」と「形式知」

結局のところ、ナレッジマネジメントとは、ナレッジという観点から組織と個人の成長を考える「経営戦略」なのである。その点からすれば、ナレッジは「知恵」に近い概念であると言えよう。

このようなナレッジには、環境の変化に対応し、新しい価値を創造するための「英知」が込められているようにも感じる。例えば、組織における個人や特定のグループが持っている「ノウハウ」や「アイデア」「コツ」「あうんの呼吸」などがそうだ。そして、これらを個人の中に埋没させることなくメンバー間で共有し、それぞれの仕事で活用できるシステムへと作り上げること、さらに新しいナレッジを継続的に生み出していく風土を醸成していくこと、これこそが本来あるべきナレッジマネジメントの姿ではないだろうか。

ちなみに、この分野の第一人者である一橋大学・野中郁次郎名誉教授は、「ナレッジ」について次のような「暗黙知」と「形式知」の2つに区分している。

【暗黙知】
目に見えない形で個人やグループが持っている知識。他人に伝えにくい主観的なものが多く、持っている者独自のノウハウやスキル、問題意識、ものの見方などが該当する

【形式知】
目に見えて誰もが使いやすい形で存在する知識。客観的・理論的で数量化しやすいものが多い。モデル、データベース、理論などが該当する

イメージとしては、暗黙知はアナログ的に獲得・活用されるナレッジで、一方、形式知はデジタルなものとして獲得・活用されるナレッジであると言うことができるだろう。

いずれにしても現代の知識社会において、ナレッジワーカーにはこの2つのナレッジ(暗黙知・形式知)をバランスよく持つことが求められている。そして、そこからまた新しいナレッジを生み出すことが自らの価値を高め、ひいては組織の競争力を高めていくことにつながっていくのである。

ナレッジマネジメント導入の「目的」

近年のナレッジマネジメント導入傾向を見ていくと、大きく2つの目的があると思う。第1に、既存のナレッジの組み合わせやぶつかり合いから、新しいナレッジを生み出していこうとする点。これにより、絶え間なくイノベーションを創出し続けることができると考えているからだ。

例えば、ある人の持っている営業ノウハウとまた別の人の持っている人脈、そして既に形式知化されている社内のマーケティングデータを結合させ、新しい市場を開拓するための営業戦略を構築していく。これを容易に実現するのが、ナレッジマネジメントというわけである。

とはいっても、データベースやイントラネットを構築することがナレッジマネジメントではない。それらはあくまで結果である。しかし、実際には情報インフラの整備とナレッジマネジメントを同一視している企業が少なくない。この点については後述する。

目的の第2が、人材の流動化に対応するため。そもそも暗黙知は個人が独自に持っているナレッジである。これらは個人に帰属しているので、ある日突然その人がいなくなると、組織はその貴重なナレッジを同時に失うことになってしまう。終身雇用慣行が崩れてきている現在、こうした事態は頻発している。ナレッジの流出を防ぐためにも、ナレッジマネジメントによる全社的なナレッジの共有化が急務の課題となっているというわけだ。

「ナレッジマネジメント」をどう展開していくか

「失敗」するナレッジマネジメントの特徴

ところで、ナレッジマネジメントを導入している企業数から推計すると、成功している割合は極めて少ないように思う。確かに、ナレッジマネジメントによる経営効果を確認できるようになるまでには時間がかかるが、これも時間が経てば自動的に効果を生み出すようなものではない。

失敗している企業を見ていくと、大きく2つの特徴がある。1つは、過度なIT偏重であり、もう1つはコンセプトが先行したナレッジマネジメントの導入である。もちろん、ITツールやコンセプトは重要な要素ではあるが、これらに偏った導入を行うことにより、本質を見失い成果を出せないまま、投資を続けてしまっている企業が少なくない。

実際問題として、ITに偏重したナレッジマネジメントを導入してきた企業は、社内の情報を全てデータベース化し、その情報への到達を短くすることにとらわれて過ぎているように感じる。データベース化された情報は一方的に蓄積されるが、それらの情報が蓄積される必要性や情報の再利用などについての議論は、ほとんどなされないまま進められているのが正直なところである。挙句の果てには、その失敗をITツールの使い勝手の悪さのせいにするケースも少なくないと聞く。

一方、コンセプトが偏重した企業では、まずトップから「知識創造業になる」といった概念的な言葉が発せられ、それに過敏に反応したマネージャーや現場のスタッフが「知識創造業になるためにはどうすればいいのか?」といった命題を唱えるばかりで、実践レベルへとブレークダウンされていかない。また、「暗黙知を形式知化に」といったキーワードばかりに考えがいってしまい、「ナレッジとは何か?知識とは?情報とは?」といったテーマをロジックが定まらず盲目的に議論していくだけで、結果的に目指すべきナレッジマネジメントからますますかけ離れてしまい、一向に前に進めない状態になってしまっている。

こういったIT偏重、コンセプト偏重の企業では、ナレッジマネジメントによって何を解決し、どういった効果を生み出すべきなのかが明確になっていない。ナレッジマネジメントの推進が自己目的化し、本来の目的やナレッジマネジメントによって解決すべき課題を見失っている状態に陥ってしまっているのである。

ナレッジマネジメントを「成功」させるための考え方

改めて考えてみたい。ナレッジマネジメントに期待されることは何なのか?それは、メンバーの持つ知識やノウハウを皆で共有し、経営課題を解決するために必要な知識やノウハウを動員していき、課題解決を図ることではないか。また、そのことによって個人が学習すると同時に、組織として課題解決方法を学習するという行為を継続的に繰り返す「学習する組織」へと生まれ変わることにゴールがあると思う。

実際、ナレッジマネジメントに成功している企業では、ナレッジマネジメントの本質を「学習する組織への変革の手段」と理解しており、そのための手段としてITツールを活用している。

さらに言えば、経営課題に対するナレッジマネジメントの位置付けが明確である。解決すべき具体的な経営課題がはっきりしており、その解決手段の一部としてナレッジマネジメントが位置付けられているのだ。このようなスタンスで導入・実践することが、ナレッジマネジメントを定着化させ、効果を生み出すための必要条件である。

現実的に、従業員が日々の業務の中で生み出す有益な情報は膨大な量に及ぶ。それら全てを文書化するなど、不可能に近い。また、有用なナレッジを数多く持つメンバーは一般的に忙しく、情報を文書化する余裕もないだろう。正直、ボランティアで自らのナレッジを披露するモチベーションは持てないのではないか。そもそも、あうんの呼吸や暗黙の了解を形式知化すること自体が、極めて難しい作業である。

だからこそ、メンバーから自発的にナレッジが公開されるのを待ったり、無理に収集しようとしたりするのではなく、メンバー同士がナレッジを見つけやすいようにしたり、知識や情報を交換できる「機会」や「場」を提供したりすることが運用上、とても重要となってくる。

ナレッジマネジメント展開の「ポイント」

ナレッジマネジメントを展開する際のポイントを、以下の4点にまとめてみた。

(1)経営トップによる企業理念・ビジョンの明確化
まず、会社は何を目指すのか、どういう姿になりたいのかを明らかにし、それを組織の隅々まで浸透させることである。ナレッジであれ、人材であれ、マネジメントする場合には、その拠り所となる企業理念・ビジョンについて考えることからスタートしなければならないのはご理解いただけることだろう。

(2)企業理念・ビジョン達成のために必要なナレッジを明確にする
次に、どういうナレッジがあれば(1)で定めた企業理念・ビジョンに到達できるかを考える。それには各職場にヒアリングに出かけ、大まかなナレッジマップのフレームを作成していくことである。

(3)個人が進んでナレッジを提供できる仕掛けを作る
自分のナレッジを積極的に隠すまでいかなくても、開示に消極的であるケースは多々見られる。というのも、本人に開示するためのインセンティブが働いていないからだ。形式知はともかく、個人に属している暗黙知を提供してもらわないことには、マネジメントすべきナレッジが存在しないことになってしまう。本人にインセンティブを持たせるには、積極的にナレッジを提供したり、活用にも熱心に取り組んでいる個人を評価し、賞賛するシステムが欠かせない。

(4)集めたナレッジを共有化し、活用しやすい仕組みを作る
そして、この段階で初めてデータベースやインターネット、イントラネット等の情報インフラの整備が行われることになる。その際、「匿名、記名の両方で情報を公開することができる」「表題やキーワードから、自分が必要としている知識を持っている人を探すことができる」「情報を欲している人、保有している人双方のプライバシーが守られる」といった点に留意したい。このことで思い出すのは、米国3Mの「15%ルール」だ。ご存知の方も多いと思うが、「研究者や技術者がビジネスに役立つと思うテーマを自由に設定し、そのテーマの研究のために正規の労働時間の15%程度を費やしてもよい」という不文律のことである。この「15%」の時間で行う業務については、上司に対する報告義務も一切ない。何より、このような自由な企業風土が、数々のアイデアに満ちた商品を生み出す大きな原動力となっていることを忘れてはならない。

図2:ナレッジマネジメントのサイクル

ナレッジマネジメントの特徴は、もともと個人が持っているものを組織化しようという点にある。これまでのマネジメントは個人を組織に合わせるためのものであり、ナレッジマネジメントの発想はそれとは180度異なるものである。重要なのは、これからは個人の持つ知識の深さやそれらが集まった時の多様性が組織の強さになるということ。ナレッジはそういう強い組織を作るための、「ヒト」「モノ」「カネ」に次ぐ、第4の経営資源と言えるのではないだろうか。

参考》組織における「ナレッジ」の習得方法

知識社会で組織が生き残っていくためには、ナレッジを持つ個人を育成していくことが重要である。参考までに、個人がナレッジを習得するためのポイントについて、幾つか紹介してみたい。

「物語」で「個人」の経験を共有する

人は「経験」から多くのことを学んでいく。ただし、個人が自ら経験できることはそれほど多くないかもしれない。しかし、組織においてはこのような個人あるいはプロジェクトの経験を共有し、共に考え、学ぶことによって、個人のナレッジが飛躍的に増えていき、結果として組織全体のパフォーマンスを向上することができる。

ところが、経験から学んだナレッジの多くは、個人の暗黙知にとどまっている。だから、これらの暗黙知を積極的に形式知に書き換え、皆で共有できるようにすることが大切である。その際の方法として、経験をそのまま「物語」として伝えることも、暗黙知を共有するためには有効である。というのも物語には「コンテクスト(背景・前後関係)情報」が含まれていて、経緯や判断の理由、その結果起きたことなどを聞き手がなぞることにより「追体験」ができ、確かな学びを得ることができるからだ。最近、ロールモデルとなる人物の「キャリアストーリー」を社内ブログなどで公開していくケースが増えてきているのも、こうした理由によるからだろう。

「業務の振り返り」によるナレッジの習得

験を共有し、得られた知見をナレッジとして体系化する方法の代表的なものに「振り返り分析」がある。例えば、プロジェクトなど一連の業務が終了した時に、メンバーでプロジェクトの経緯を振り返り、良かったことや悪かったことを洗い出し、その要因を分析する。特に失敗の要因分析においては、不足していた知識を徹底的に追求し、新たに価値を創造するプロセスを再設計していくことだ。このように、成功や失敗から学んだナレッジを共有していくことで、学習する組織風土を作っていくのである。

「現場」からナレッジを学ぶ方法

問題を抱えた現場というのは、ナレッジの宝庫である。ナレッジを習得するために、そのような現場に個人がどう向き合うべきか。何がポイントとなるのかを、以下に整理してみた。

(1)物事の「本質」を見つめていく
まず、事実をありのままに見つめ、思い込みや先入観を排除することである。その事実がなぜ自分の理解と違うのか、あるいは現実と理想のギャップが生じている原因は何なのかを、「なぜ?どうして?」と繰り返し考えていくことである。

(2)自由に「発想」を広げ、解決策を考える
繰り返し考えて原因をつかんだら、それに対する本質的な解決策について、既成概念にとらわれない自由な発想で考えてみる。

(3)「関係者」を仲間に引き入れる
そして、解決策を実行するに当たっては、関係者に自分のアイデアを論理と情熱を持って説明して、仲間に引き入れる。そうすることで、ナレッジが生まれるスピードが格段に速くなっていく。

やり遂げていく「姿勢」

ナレッジ習得を目指し、やり遂げていくためには、以下のような姿勢が重要である。

(1)自分が「主人公」だという意識を持つ
課題や物事を自分のこととは考えず他人事として考えてはいけない。また、評論しかしないのでは、ナレッジは生まれない。まず第一に、自分が主人公であるという意識を持つことが重要である。

(2)「情熱」を持ち続ける
情熱を放棄、失ってしまった瞬間に人は思考や行動が停止してしまう。何かを成し遂げたい、こういう人間になりたい、世の中に役に立つ事業をしたい、皆に喜ばれる商品を作りたいなど、自分が働くことの長期ビジョンや、短期・中期的な目標達成を常に持ち続けることが大切である。

(3)果敢に「リスク」へとチャレンジする
常にリスクを先に考えてしまって立ち止まるのは問題だ。取るべきリスクへ、果敢にチャレンジすることである。その際、本来どうあるべきかを考え、次にどうしたらリスクを軽減できるかを考えることが正しいリスクに対するチャレンジの仕方である。

ナレッジを得るための「基本プロセス」

ナレッジは意識して得ることができる。その獲得パターンは各自それぞれであるが、以下に一例を示しておく。ぜひ、参考にしてほしい。

(1)両面から「情報」を収集する
仕事に直結する情報と、すぐに必要ないかもしれない一般情報の両方について、時間の許す範囲内で数多く収集していく。

(2)深く、考え抜く
次に、一見無関係に思える物事に対して関連性を見いだす、さまざまな角度から情報に手を加えるなど、集めた情報について頭の中で考え抜く。これには相当程度時間をかける。ただし、この時点ですぐにナレッジが生まれるとは限らない。

(3)一度、考えていた対象から離れる
十分考え抜いたと思ったら、いったん考えていた対象から離れてみることである。しばらくの間、放っておくのだ。そして、この間は全く別のことを行う。考えていた対象の資料も見ないようにする(しかし、実は頭の中では考えているのだ!)

(4)ふとしたことで「アイデア」が芽生える
(1)~(3)のプロセスを繰り返し行い、いつもどこかで問題を考えていると、この(4)は確実に起きてくる。そして、その瞬間を逃さないことである。

(5)アイデアをナレッジへと大切に「育てる」
生まれたてのアイデアは忘れやすく、また壊れやすいので、できるだけ論理的な思考方法を駆使してアイデアを強化し、さらに言語化(図形化)していく。また、その成果を自分の心の中にしまい込まずに、周囲の理解のある人や知識を持っている人に話をして、評価を受けてみることが有効である。その結果、良いアイデアは自分で発展していき、必ずやナレッジへと成長していくことだろう。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

人事マネジメント「解体新書」第117回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは【前編】
厚生労働省などの「公的資料」をいかに読み抜くか
近年、「働き方改革関連法」の施行や「パワハラ防止法」の成立に代表されるように、人事部の業務に関連する「法改正」の動きが一段と活発化している。そのため、人事の仕事...
2019/11/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第116回
「パワー・ハラスメント防止」を義務付ける関連法が成立、
企業は「パワハラ防止法」にどう対応していけばいいのか?【後編】
職場での「パワー・ハラスメント(パワハラ)」の防止を義務付ける関連法が2019年5月29日、参院本会議で可決・成立した。大企業には2020年4月から、中小企業は...
2019/10/22掲載
人事マネジメント「解体新書」第115回
「パワー・ハラスメント防止」を義務付ける関連法が成立
職場における「パワー・ハラスメント」の現状とは【前編】
近年、「パワー・ハラスメント(パワハラ)」がもたらすさまざまな弊害が関心を集めている。2019年5月には、パワー・ハラスメント防止を義務付ける関連法(パワハラ防...
2019/10/17掲載

関連する記事

管理職育成のヒントと課題解決のためのサービス
企業の重要課題の一つとなっている管理職育成について、管理職に求められるスキルと育成のポイントをまとめました。外部ソリューション活用のヒントとサービス内容もあわせ...
2019/05/20掲載人事支援サービスの傾向と選び方
定着率が高くても、注意が必要なワケ
採用難の状況にあって、従業員の定着は大変重要な課題です。 平成29年版パートタイマー白書によると、9割以上の企業が、パート・アルバイトに 長期継続して勤務してほ...
2019/04/17掲載新卒・パート/アルバイト調査
パート・アルバイトの職場に対する隠れた不満
ES(従業員満足度)の向上が高いCS(顧客満足度)を生むという考え方があります。従業員が仕事や職場環境に不満を持ったままでは、十分な成果を出すことは難しいのです...
2018/08/20掲載新卒・パート/アルバイト調査
パートが定着する上司、定着しない上司
人材不足で求人難の現在。“採用”という入口から人が入ってこないのであれば、出口つまり“退職”を防ぐ=定着させることで、企業内の人員を維持していくという視点も重要...
2018/05/10掲載新卒・パート/アルバイト調査
【グローバルタレントマネジメントフォーラム2018】成長する企業の人財活用力 ―可能性を引き出すタレント基盤―
今や企業の成長を左右する源泉は人財活用力であり、人財を一つの企業資産と考えることが企業と個人、双方を成長へと導く。そこで重要になるのが人財活用の基盤となるタレン...
2018/03/28掲載注目の記事
次世代リーダー育成特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

研修費ゼロの人材育成 3,650社が活用!業界唯一の統合型eラーニング

注目コンテンツ


次世代リーダー育成特集

さまざまな取り組み方がある「リーダーシップ育成」について手法や外部ソリューションをご紹介します。
コンテンツトップバナー


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


管理職1年生日記 (第2回)

管理職1年生日記 (第2回)

営業課長へと昇進し、当初は個人目標がなくなったことへの戸惑いを見せたA...


若手社員の定着率をアップさせるためには

若手社員の定着率をアップさせるためには

求人難が叫ばれる中で、若手社員の早期離職傾向がなかなか止まらない。少子...