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人事マネジメント「解体新書」

人事マネジメント「解体新書」第114回
「ストレスチェック制度」が導入されて3年が経過
「ストレスチェック」を活用した企業事例を紹介【後編】

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多くの企業にとってなじみのなかった「ストレスチェック制度」が義務化されたことで、準備段階から実施に至るまで、戸惑うことも多かったのではないだろうか。制度が導入されて3年が経過した現在、「ストレスチェック」を活用した職場改善の取り組みはどのように進んでいるのか。「後編」では、具体的な企業の事例を紹介する。

※前編はこちら

事例1. ストレスチェックの結果をさまざまな形でフィードバックし、職場環境改善へとつなげる

大手メーカーA社では、ストレスチェックの結果を職場改善へと結び付けた事例を、社内のイントラネットで紹介。取り組み内容や効果を具体的に示し、各職場での改善施策の検討や策定に役立てる「グッドプラクティス」としている。

義務化される前から「職場風土調査」を実施

A社は、ストレスチェック制度が義務化される以前から、従業員のメンタルヘルス対策が重要であるとの考えのもと、「職場風土調査」を実施している。各職場の従業員が日々感じているストレスの度合いを数値化して管理職に提示。自分が管理監督する職場の状況を理解してもらい、職場改善につなげるようにするものだ。

さらに、ストレスチェック制度の義務化に伴い、医科大学の協力の下、「メンタルヘルス」に関する調査項目を増やし、職業性ストレスをより詳しく測定した。

また、、労働安全衛生法の定めに基づき、「ストレスの要因」「心身のストレスの反応」「周囲のサポート」の三つの要素を点数化して「高ストレス者」の選定を行っている。「高ストレス者」を選定する際の点数は、従業員が過去の「職場風土調査」を受検した際の点数傾向を基準に、上位10%程度が「高ストレス者」と判定されるような設定を独自に設けている。

「高ストレス」者には、面接指導と並行して日常的な保健相談を

「高ストレス」に該当した従業員に対して、医師による面接指導を案内するが、法定の枠組みで対応すると、従業員が面接を申し出た時点でストレスチェックの結果が人事担当者や職場の上司に知られることになるため、面接指導を望まない従業員が増える恐れがあった。

そこでA社では、法定の枠組みによる医師の面接指導と並行し、健康管理室が行う日常的な保健相談として受け付けるようにしている。保健相談では、人事担当者や上司にストレスチェックの結果を開示する必要がないため、気軽に相談することが可能。実際、保健相談の利用状況はかなり高い水準となっている。

組織分析は、自部署の経年変化や相対的な位置づけが、容易にわかる形でフィードバック

組織分析に関しては、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査」による分析結果を、部署ごとにフィードバックをしている。「ストレスの要因」「心身のストレスの反応」「周囲のサポート」の三つの要素から総合健康リスク(※)を算出しているが、管理職が職場改善への取り組みをしやすくするために、「自部署の経年変化」「他の部署名を伏せた総合健康リスクの高い順に並び替えた部署別一覧」などを棒グラフ(*)で表示することにより、自部署の位置づけが容易にわかる形でフィードバックを行っている。

※総合健康リスク……仕事のストレス要因から起こり得る健康問題のリスクを、標準集団の平均を100として表示したもの

高リスク職場には、「職場改善計画シート」を作成

組織分析の結果、全国平均よりも10%以上総合健康リスクが高い職場には、「職場改善計画シート」の作成を要請。職場をどのように改善していくのか、具体的な計画を明記させている。さらに、20%以上高い職場を「ハイリスク職場」と設定。産業医が所属長を呼び出し、職場の状況と問題点を指摘、改善の方向性を説明した上で、より詳細な「職場改善計画シート」を作成させている。

「改善事例」を「グッドプラクティス」として全社的に公開

A社では、「職場改善計画シート」を作成していくことが、総合健康リスクの低減に大きく寄与していると考えている。なぜなら、具体的な取り組みを明記し、必ず実行しなくてはならないことになっているからだ。実際に「職場改善計画シート」を作成して取り組みを行った職場では、次年度の総合健康リスクの数値が大きく改善している。

そこで、新たに高リスク職場が職場改善計画に取り組んだ内容を、イントラネットで全社的に「グッドプラクティス」として公開することにした。ここでは、各職場で行われた改善事例を掘り下げて紹介、課題をどうやって克服していったのかなどを詳しく記している。

会社全体として改善を進めていくには、数値上は問題が現れていない職場に対しても、さらなる改善の意識を持ってもらう必要がある。そこで、管理職研修の場で「グッドプラクティス」の紹介を行い、要改善の職場以外にも周知を図っている。また、「グッドプラクティス」に挙げられている行動を安全衛生年間計画(※)に盛り込むなど、各職場での改善施策の検討や策定につなげている。

※安全衛生年間計画……各都道府県の労働局が作成を推奨している、安全衛生の行動に関する計画書


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