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人事マネジメント「解体新書」
第七回:2008年卒採用の振り返りと、2009年卒採用に向けて

「求職難」から一転して「求人難」へと、雇用を取り巻く環境はここ数年で大きく様変わりした。特に、若手の人材を求める企業の姿勢が180度転換し、新卒者に対する企業の採用攻勢は、かつてのバブル期を彷彿とさせるものとなった。今回は、2008年新卒採用を振り返るとともに、既に始まっている2009年新卒採用の展望とその対応のポイントをまとめてみた。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


2008年卒採用の振り返り

「前倒し」傾向がより鮮明に

空前の採用難と言われた2008年卒採用であるが、これは想定以上のものだったかもしれない。周知のことであるが、日本経団連の取り決めにより、大手企業は10月1日にならないと学生に採用内定を出すことはできない。つまり、それ以前の段階では、「内々定」という形で採用を確約するという構図なのである。

ところが金融など、学生に人気の高い一部の業界で4月を待たずに実質的な採用選考が行われたため、各社ともその動きにつられることになり、例年以上に早い段階で内々定を出す企業が続出したのだ。事実、昨年までは4月下旬に内々定を出していた企業が、今年は4月上旬に前倒しする動きが目立った。さらには、6月の段階で早くも2009年卒の大学3年生を対象とした就職イベントが始まっている。企業の採用スケジュールは、想像する以上に早期化してきたのだ。

それは、調査結果でも明らかである。ディスコがまとめた「7月1日現在の就職活動状況」(図1)によると、大学4年生の84.1%が7月1日時点で、事実上の「内々定」を取得していた。前年の83.1%より1ポイント、直近の底値である2002年の72.1%を12ポイントも上回っている。また、内々定取得者1人当たりの内々定数は2.3社(前年2.1社)で、3年連続で2社以上となっている。なかでも文系男子は2.6社と、他の属性(文系女子2.2社、理系男子2.2社、理系女子2.2社)と比べ突出しており、偏りが大きいのが目につく。

いずれにしても、夏休み前、卒業まで9ヵ月残した時点で多くの学生が就職活動を終了したわけであり、2008年卒採用は、企業が早めに新卒者を確保する動きが例年以上に活発だったことに間違いない。

今後、「内定辞退」が続出する企業も…

この調査結果をさらに詳しくみていくと、問題がより浮き彫りとなってくる。就職先を決めて就職活動を終えた学生は、回答者全体の71.1%に達する。複数企業の内々定をもらいながら、どの会社に入社するかを決めかねている学生は2.3%、さらに現在の内々定企業に飽き足らず、別の会社の内々定を得るために就職活動を続けている学生は10.7%となっている。一方、この時点でまだ内定を得ていない学生も15.9%に及んでいる。

問題となるのは、内々定者のうち、複数の企業から内々定を受けた学生である。その割合は62.7%と前年の55.1%を7.6ポイントも上回っており、今後、「内定辞退」が続出することが容易に予想される。特に、中堅・中小企業では採用枠を満たせない企業が出てくる公算が高い。もちろんこれは程度の差こそあれ、大手企業でも同様である。この先、企業は内々定を出した学生の一部が入社しないことを前提として、再度、採用計画の修正を迫られると思われる。

とはいえ、内々定を得ていない学生や内々定を得ても就職活動を続けている学生も少なくない。ディスコの調査結果から推計すれば、4人に1人の割合となる。そう考えると、これから本格化する中小企業の採用や大企業の秋採用の動きからも目が離せないだろう。

図1(A):7月1日現在の内定の状況(%)

  全体 前年全体 文系男子 文系女子 理系男子 理系女子
内定あり 84.1 83.1 81.5 84.9 87.2 83.0
内定なし 15.9 16.9 18.5 15.1 12.8 17.0
内定社数(平均/社) 2.3 2.1 2.6 2.2 2.2 2.2

図1(B):回答者全体の内定の有無・活動状況(%)
図1(B):回答者全体の内定の有無・活動状況(%)
出所:7月1日現在の就職活動状況(ディスコ)

「求人倍率」は2.14倍と16年ぶりに2倍を超える

空前の採用難と言ったが、リクルートのワークス研究所が発表している「第24回ワークス大卒求人倍率調査(2008年卒)」(図2)をみると、それは歴然としている。「求人総数」はバブル期を上回る93.3万人と過去最高に達し、その結果、「求人倍率」は昨年の1.89倍から2.14倍と、実に16年ぶりに2倍を超えている。

これを従業員規模で比較すると、1000人未満の求人倍率は4.22倍に対しているのに対し、1000人以上の企業では0.77倍と、従業員規模間における求人倍率の格差がさらに拡大したのが今年の特徴である。これも「超売り手市場」ということで、学生の大手企業志向が高まっていることが背景にあるわけで、1000人未満の企業への就職希望者は昨年よりも減少している事実を考えると、この先、中小企業にとっては厳しい採用環境となることが十分予想される。

図2:従業員規模別「大卒求人倍率」の推移(倍)
図2:従業員規模別「大卒求人倍率」の推移(倍)
出所:第24回ワークス大卒求人倍率調査(リクルート ワークス研究所)

中小企業では、大企業を上回る「初任給」を用意

超売り手市場の状況下にあって、人材確保に強い危機感を持つ中小企業では、大企業を上回る「初任給」で処遇するところが出てきた。日本経団連が8月29日に発表した「2006年3月卒新規学卒者初任給調査結果」(図3)によると、大企業(3000人以上)の初任給を100とした場合の指数は、中小企業(同100人未満)の大卒事務系では105.7となっており、前年の102.9から2.8ポイント上昇している。ちなみに、短大卒事系は118.1(前年105.6)、高卒事務系110.5(同102.4)と、いずれも大企業との差が広がった。来年度では、この傾向がさらに強まるとの見方も出ている。

実際問題、中小企業の初任給については、2003年頃から大卒でも大企業を上回るケースが出てきている。それが、この求人難により、中小企業が優秀な人材を確保するために、初任給を引き上げる傾向がより顕著となってきたというわけである。さらに今後、人材の定着、そして人材の育成という側面からも、新しい対応を迫られると予想される。

図3:従業員規模別「初任給」

  大学卒事務系 短大卒事務系 高校卒事務系
指数(%) 指数(%) 指数(%)
3000人以上 200,835 100.0 168,562 100.0 158,233 100.0
1000~2999人 203,618 101.4 167,273 99.2 157,656 99.6
500~999人 206,666 102.9 171,519 101.8 162,558 102.7
300~499人 203,961 101.6 179,069 106.2 162,558 102.7
100~299人 208,488 103.8 172,475 102.3 162,031 102.4
100人未満 212,262 105.7 199,050 118.1 174,800 110.5
指数は、従業員3000人以上を100.0として算出している
資料出所:2006年3月卒 新規学卒者決定初任給調査結果(日本経団連)

人材の「質」と「量」の両立実現はできたのか?

ところで、バブル期の採用と言えば、多くの企業は「量」の確保に走り過ぎた結果、人材の「質」の低下に悩んだ苦い経験を持つ。読者のなかにも、苦い思い出をお持ちの方が少なくないのではないか。当時の反省から、その後の厳選採用というトレンドから自社の「採用基準」を維持しようと考える企業は多い。そして、人材流動化の流れのなか雇用形態の多様化を行い、派遣スタッフなどの外部人材やアルバイト・パートなどを活用し、事業経営を進めてきた。それが、事業拡大のフォローウインドが吹くなかで「正社員志向」が高まってきた結果、量の確保と質の維持の両立は年々難しくなっている。聞くところでは、今年から採用基準を緩和してでもとにかく「数」を確保しようとする傾向が強いとのことだ。

前述のディスコがまとめた「2007年採用マーケットの分析」によると、採用担当者の55.6%が「採用基準に達する応募者の不足」を業務での懸念材料に挙げているという。企業の人材へのこだわりは強いものの、現有のスタッフと予算で人材獲得競争に勝ち抜けるかどうか、いま、まさに採用担当者の「手腕」が問われていると言えよう。

学生の「気質」、そして「企業選択基準」の変化

一方、学生もこの十数年間で様変わりしてきた。思えば、昨今の大学生が過ごしてきた社会というのは、まさにバブル崩壊後の日本の不況期に当たる。そのような経済状況下、世の中をみる彼らの目は冷めている。加えて、iモードやiPod、さらにはmixiなどデジタルなコミュニケーションが日常的に存在するなかで生活を送ってきた。私たちが想像する以上に「メールテキスト」によるコミュニケーションに長けている世代と考えていい。だから、就職活動においてもそのスキルを巧みに駆使し、ネットでの情報収集を活発に行っている。

また、彼らの世代の価値観をみると、「ゆとり教育」の洗礼を受けたこともあり、強い欲求や競争心、闘争心が希薄な傾向にある。人より抜きん出たり、目立つようなことを好まない。生活態度においても非常に真面目で、何事も「及第点」でいいと考える学生が多くなっている。

そのためか、企業を選ぶ際に重視する基準としても、「給与・福利厚生など待遇がよい」「雇用が安定している」が急激に増加している。一方で、「自分のやりたい仕事ができる」「仕事の成果や業績が正当に評価される」などは減少傾向にある。彼らの望む職業生活には「安定性」が中心にあって、「出世」はそれほど重要ではない。争いを好まず、すべからく“ほどほど”志向なのである。

このような出世よりも生活の安定を重視する傾向を持つ学生を採用する際の施策として、企業は多くの学生を集めること以上に、内定者や選考中の学生へのフォローなど、1対1のコミュニケーションを充実させるための「つなぎとめ」に力点を置くようになった。これも、見逃してはならない今年の傾向の一つである。

数は増えたけれど、ミスマッチも多かった「お見合い」

さらに上記以外で、2008年卒の採用活動でみられた現象について、幾つか気になった点をまとめてみた。まずは「ミスマッチの多かったお見合い」である。お見合いの場となるインターネットによる資料請求(エントリー)の社数や会社説明会・セミナーの参加率・回数は前年より増えてきている。しかし、お見合いの機会は増えたものの、企業によって参加状況の濃淡が大きく出ることになった。この差は、なぜ生じたのか?

その答としては、採用ブランドの問題は別に置くとして、一つは「日程が合わない」「会場が遠い」などの物理的な問題がある。そして、「会社に興味がなくなった」といった動機形成に関する問題があるように思う。このような説明会などお見合いへの参加率を上げるためには、学生にとってリアルな情報を提供する、あるいはターゲットに絞った情報提供を行うなど、とにかく学生が参加しようと思える内容とすること、そして日程・開催地を増やす、調整するなどの運営面での工夫が不可欠だ。

「OB・OG」など人メディアの活躍

次に、「OB・OG」などに代表される人メディアの活躍が挙げられる。今年は、例年以上にOB・OG訪問率・訪問社数が増加しており、事実、金融や大手メーカーなどで「リクルーター制度」が復活してきたことはよく知られている。

ネットというバーチャルなメディアに慣れ親しんだ昨今の学生に対して、人メディアの下では、フェース・トゥー・フェースの関係がもろに提供される。そして、人が介することによって、ネットでは十分に伝えることのできない情報や熱意・思いなどのコミュニケーションが可能となるのだ。自社に対する動機形成・フォローという側面で考えれば、この人メディアはその最たる方法と言えるだろう。今年度、改めてこのメリットに注目が集まったというわけである。

さらに、自社にOBやOGがいない場合でも、先輩社員との接触の場を意識して作る企業も多くなっており、ネットとは違った人メディアの有用性を活用する動きは、しばらく続くと予想される。

内定ブルー・内定辞退を防ぐための「内定者フォロー」

前述したように、内々定を得た後にも、多くの学生が就職活動を続けていく。その理由はその他にも選考中の企業があることはもちろんだが、内々定をもらった企業に決めてよいかどうか不安を抱いていることも見逃せないと思っている。実際、この理由が今年は増えていると聞く。いわゆる「内定ブルー」の問題だ。改めて言うまでもないが、「内定出し」がゴールではない。内定を出した後の継続的なフォローが大切なのである。そのフォローの際に心がけておくべきことは、入社後に活躍できるイメージを持ってもらえること。採用担当者はこの点を忘れてはならない。

実際、例年以上に行われているのが「内定者フォロー」である。求人難の状況下、ある意味で採用活動の実態は「採る」から「育てる」へと変化してきた。採用した後の「内定辞退」や入社後の「早期離職」の課題をこれまで以上に重視し、人材定着のためにさまざまな施策を行う企業が増えてきていることからもよく分かる。それも、単にフォローの方法を工夫するといったレベルではなく、入社後3年目くらいの定着までを新卒採用の範疇ととらえ、長期的な視点で採用戦略を講じている企業も少なくない。

まさに、内定後のフォローの重要性がますます高まってきたというわけだ。特に、中堅・中小企業やベンチャー企業の場合、大企業と比べて知名度やブランド力で劣るのは否めない。そこで、経営幹部が内定者の家庭を訪問したり、内定者の父母を対象とした会社見学会を開いたりするなど、自社理解、仕事理解に向けて大きな努力を払っている。あるいはいち早くアルバイトとして雇って帰属意識を高め、人材の囲い込みと育成の両立を狙っている企業もある。さらには、内定者フォロー用にインターネットの交流ツールであるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を用いる企業も出てきた。その実情を聞くと、ネット上での交流が予想以上に盛り上がり、学生自らが企画を出したり、イベントを行っているケースもあるという。何より、日常的な交流が会社への愛着を育み、内定防止辞退につながっている。こうした動きは今後、ますます盛んになるだろう。

残る「秋採用」に向けて

2008年卒採用を振り返ってみると、景気の長期安定に少子化が加わり、人手不足を心配する企業が早めに学生の確保に動いている姿が浮き彫りになったことがよく分かる。その結果、「採用充足率」は全体的に下がり、おそらく、企業による格差はそれ以上に大きくなると予測される。また、充足できなかった企業については、この先の秋採用や留学生などの採用でいかに人材を確保できるかという、もうひとヤマが待ち構えている。まだまだ気を抜けない。


2009年卒採用に向けて

以上みてきたように、2008年卒採用は継続中だが、一方で2009年卒採用は既にスタートしている。後半は、2009年卒採用に向けての展望、そして、これから人事部が考えなければならないこと、やるべきことをまとめてみた。

「選ぶ」から「選ばれる」時代に

まず、採用が「選ぶ」から「選ばれる」時代になったこと。この変化を強く意識すべきである。来年度、採用環境がさらに厳しくなることは多くの企業が予測している。だからこそ、何よりも採用する側が、選ばれる側であるという認識を強く持つ必要がある。

現在では学生のみならず、雇用される側が一企業に縛られることなく、自己実現やキャリアアップを図ることが可能な時代になってきた。言い換えれば、雇用する側が社員一人ひとりの創造性やオリジナリティを十分に発揮できる諸制度などの環境整備が重要性を増している、ということになる。それには、企業も今後は自社の理念や人材観を明確に訴え、求職者にメッセージングしていく必要がある。人材を惹きつける魅力を企業側が備えていなければ、自社に必要で本当に優秀な人材は集まってこない。2009年卒採用について、このことを第一に念頭に置いてほしい。

その際に人事部が考えておくべきことは、自社の「らしさ(独自性)」を採用マーケットのなかでどう「ブランド」として情報発信していくか、である。具体的に言えば、自社の「らしさ(独自性)」について、「学生はどう感じるか」「マーケットでどう映るか」といったマーケティング的な発想を持ち、より効果的に伝えていくためのメッセージを一つひとつ考え直していくことである。

学生は、将来に渡っての「顧客」である

あまり思ったことはないかもしれないが、実は学生を取り巻く「関係者」には、数多くのプロフィールやバックボーンを持つ人がいる。例えば、「就職活動の相談相手」として考えた場合、家族や同級生、先輩はもちろんのこと、大学外の友人、アルバイト先の友人なども含まれてくる。というより、最近の学生は活動エリアが必ずしも大学中心にはなっていない。事実、面接などでも「自己アピール」する材料として、「アルバイト経験」が「大学のサークル・クラブ活動」を抜いてトップに踊り出ていることからも、そのことが伺える。

だから、もし採用選考の場面で「悪い印象」を与えてしまうと、それは瞬く間にその学生の関係者へと伝わっていく。しかも、現在はネット社会だから、それはあっという間だ。それこそ1人の学生に対して犯してしまった「ミス」が、企業にとって取り返しのつかない事態を招くことが十分にあり得る。さらに、学生を消費者として考えた場合でも、将来に渡っての大切な「顧客」と考えることができる。そうした存在であることを、これからの採用活動では関係者が全員、真摯に考えていかなければならない。

相互理解・選別採用の時代の「全体設計」を

求職難から再び求人難の時代を迎えたわけだが、ここに来て、学生と企業がお互いに“成熟”してきたようにも思う。学生は多種多様な視点で企業を選別するようになってきたし、企業も「大学名」や「スペック」で採用していた流れから、お互いの価値観・志向も含めた相互理解・相互選別の採用という視点へと、採用活動のあり方が大きく変化してきた。

そう考えた場合、採用活動を開始する前に、「どんな能力・適性を持った人材を、何のために、どの分野で、どのように活躍してもらうか」といった「採用目的」を十分にイメージした上で、対象者となり得る「母集団」を形成する必要がある。また、これまでのふるい落とすことを主としたスクリーニング的な考え方から、お互いの方向性(価値観・志向)を合わせていくようなチューニング的な考え方へと、採用におけるコミュニケーションのあり方を変えていく必要があるだろう。

このような考え方の下、より自社にふさわしい母集団形成を行い、効果的なセミナー・説明会によって学生の動機形成を促し、それと関連した選別選考について全社を巻き込んだ体制でいかに進めていくか、この時期にはまずその「全体設計」を第一に考えていくことが重要である。

「求める人材像」の明確化と運用

一方で、採用において最も重要である「求める人材像」を明確化できていない企業が相変わらず少なくない。その理由には、
・そもそも、求める人材像を明確化することの理由(意味)が理解できていない
・今後の事業や組織を担っていく人物像がよく分からない
・経営と人事、現場間の求める人材像にギャップがある(共有できていない)
などが想定される。

求める人材像を明確にするためには、人事は経営の言うところの「わが社が求める人材」とはどういう人材要件を意味しているのかを「スペック」と「タイプ」の観点から具体的に言語化していくこと。この作業を徹底的に行う必要がある。そして、求める人材像の「要件定義」ができたなら、次はそれを人事部長から採用担当者、リクルーター、現場責任者など、採用に関わる関係者が同じ評価軸を持って理解し、採用選考で実際に運用できるようにすることだ。言うまでもなく、これは現代における採用の「基本中の基本」であるからして、絶対に欠かしてはならない事項である。

仕事の「リアリティ」「正確さ」を伝える工夫

近年、複数内定をもらった学生の就職活動のパターンをみると、会社説明会やネット活用、そして実際にOB・OGに会うなど、実に幅広い情報収集活動を行っている。そうした学生と企業が接触する「場」において、いかに仕事の「リアリティ」や「正確さ」というものを伝えていけるかどうかが、採用の成否だけでなく、その後の定着へと大きな影響を持ってくる。

例えば最近、職種別採用を行う企業が増えてきているが、考えてみると、職種の内容は会社によってさまざまである。同業種でも結構違うことが多い。それこそ、実際は商品企画の仕事であるのに、表記上は「営業」としているケースもある。そうすると、営業というイメージから学生はどうしても敬遠する傾向がある。これも、結果的に仕事内容を正しく伝えていないから起きることに他ならない。

実際問題、こうした“齟齬”は、採用コミュニケーションの至るところで散見される。このような問題を回避するには、なるべく学生に近い年代の社内の人の協力を仰ぎ、採用広報上の表現のチェックを行うことである。そして、共感を促す事例や説得力のある物語性を持ったメッセージで伝えていくこと。正直、この作業を行うだけでもかなり違ってくるはずである。こうした表現上におけるマメさは、採用担当者としての必須要件だろう。

変化に対応し、進化し続ける企業が採用の「勝ち組」に

日本経済の発展とともに、採用を取り巻く状況も年々、大きく変化してきている。果たして10年前、現在のような採用シーンとなることを誰が想像できたであろうか?その意味でも、これからは各社における採用戦略の「独自性」が、より問われることになってくると思っている。

優秀な人材の争奪戦が激化するなか、どのような人材をなぜ自社は求めているのか。そして、それを満たす人材には、どのようなインセンティブ(活躍できる場、報酬、環境、仲間、共感、キャリア形成など)を提示できるのかを明確にしコミュニケーションを深めていく、それによって他社との差別化を実現していく。これこそが独自性であり、この採用の「原則」においては変化はない。このことをいま一度、2009年卒採用を行う際にぜひとも考えてほしい。

同時に、独自性を実現する際に重要なのは、常に変化に対応し、進化し続けるということだ。うまくいかないことがあるかもしれない。しかし、このことに対して勇気を持って実践できる企業が、結局は採用の「勝ち組」になるだろう。これは、この先も間違いのない「真実」だと思っている。

2008年卒採用の振り返りと、2009年卒採用に向けてのチェックシート

他方、アドミニ的な実務が多いのも、採用という仕事の特徴である。というか、これが的確に行われていなければ、スタートラインに立てないのだ。最後に、この先2009年卒採用活動を進めていくために必要と思う項目の「チェックシート」を用意してみた。確認資料として活用していただければ幸いである。

内定者フォロー
・以下のような内定者フォローの準備・計画はできているか?
内定者懇談会
会社、職場、工場見学
社内行事への参加
自社でのアルバイト
社内報、内定者報の送付
内定者が編集する内定報
通信教育
近況報告
新聞・雑誌などの定期購読
合宿研修(内定者フォロー研修)
父母に対する会社説明会・見学会
チューター(ブラザー)制度
SNS(インターネットの交流ツール)

今期新規大卒採用の総括と社内レビュー
・内定者フォローとともにこの時期、今期の採用活動の反省・振り返りを行うことも重要である。以下のような項目についてのチェック・対応は済んでいるか?
採用目標に対する採用結果の記録
内定歩留まり率の把握とその対策
求人サイト、マス媒体の効果測定(利用時期・出稿時期のタイミング、学生の反応)
DM・ホームページの効果測定(返信率、アクセス状況、学生の反応)
各種イベントの効果測定(会社説明会・合同説明会の開催時期・回数、開催場所の適正、学生の動員数・反応)
採用体制(採用チームの活動状況、採用担当者・リクルーターの選定・育成)
採用経費(DM制作とその費用、求人サイト・媒体への出稿、会社説明会・セミナーなどイベント開催費、内定者管理・フォローのための諸費用、大学就職部や担当教授・学生等との接待交際費・交通費)
内定者を中心に、PR訴求媒体、PR内容などに関してのアンケートの実施
採用担当関係者・協力者からの情報収集
全体のスケジュール・タイミングの是非

来期新規大卒採用計画の立案
・来期の採用計画を立てるに当たり、以下のような項目に関しての内容・実行時期等は決定しているか?
採用方針の決定(過去実績・昨年の振り返り、雇用環境の調査・分析、求める人物像の確定、職種別・給源別採用数の決定、採用数確保のための取り組み内容)
採用予算の立案・計上(活動費用、広報・PR・媒体費用、イベント費用、会社説明会費用、採用選考関連費用、内定管理関連費用、交通費)
採用体制の確立(採用チーム・プロジェクトの確立、社内協力体制、採用担当者の選出・育成、リクルーターの選出・育成)
採用支援会社・求人媒体会社(代理店)への問い合わせ・資料請求、打ち合わせ、比較検討
採用ツールの作成(入社案内、会社案内、DM、求人サイト、求人媒体、ホームページ、採用マニュアル、各種文書類)
資料請求、エントリーシートへの対応
大学訪問、研究室訪問、就職部との対応
学生への対応(学生情報の入手とデータベース化、適切な学生対応)
セミナー・会社説明会の開催
採用試験
面接・面談
内定フォロー・内定者向けイベント
新入社員受け入れ教育
インターンシップ、学生アルバイトの実施・受け入れ体制



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