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人事マネジメント「解体新書」
第六回:「派遣スタッフ」の戦略的活用

1986年に「労働者派遣法」が施行され、既に20年以上が経った。規制緩和の流れのなか、何度かの改正を経た後、一部職種を除いて全ての業務で派遣がOKとなったのは周知の通り。現在では現場でのニーズの高い営業職・販売職をはじめ、さまざまな仕事で派遣スタッフが活用されている。さらには紹介予定派遣、新卒派遣、トータル派遣など新たな取り組みが出てきており、人材派遣サービスでは今後大きな成長が見込まれている。これも、近年における企業の「人材活用のあり方」に大きな変化が出てきたからだ。今回は、このような状況下、外部人材としていかに派遣スタッフを戦略的に活用していけばいいのか、そのポイントをまとめてみた。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


なぜ、社員ではなく、派遣なのか

雇用関係は「派遣会社」にある

最初に、おさらいを。「人材派遣」とは、派遣元で雇用している労働者を、求めに応じて他社(派遣先)に派遣し、他社の指揮命令のもとで働かせることをいう。派遣元企業と派遣先企業、そして労働者(派遣スタッフ)の関係は図1のようになっている。これをみても分かるように、派遣スタッフは通常、派遣先企業へ行って業務に当たるわけであり、そこで、派遣スタッフに業務の指示命令を出すのは派遣先の企業ということになる。つまり、派遣スタッフは派遣元の企業に雇用されているのであって、指揮命令を下す派遣先とは雇用関係はない。

図1:人材派遣とは
図1:人材派遣とは

 

「全労働力」を社内で抱えるリスク

近年、景気は回復してきたものの、企業間の競争はより厳しい状態にある。新卒採用も活発化してきたが、かつてのような大量採用ではない。あくまで厳選採用が中心だ。企業も固定費としての「人件費」の増大を避けるために、不必要な人材を抱えておくことはしない。さらには、人材活用のあり方をみても、「採って育てる」から「育った人を採る」へと転換してきた。派遣スタッフはこうした状況のなか、多くの企業で活用されるようになってきた。

これまで日本企業は、優秀な人材を多く社内に抱え、長期間に渡って育成してきた。しかし、昨今の厳しい経営環境の下で、企業活動に必要な労働力を全て社内の人材でまかなうことは、極めて「リスク」の高いこととなった。ここに来て新卒採用も復活をみせているが、グローバルな競争、めまぐるしく変化する市場環境に合わせ、スピード経営が求められてくるなか、仕事の量や質に応じて、社内と社外の労働力を戦略的に組み合わせていく仕組みが不可欠となってきたからだ。人材のオン・デマンド活用とも呼ぶことができるだろう。

そもそも、正社員の人件費は「固定費」である。それに対して派遣スタッフの費用は「流動費」にカウントされる。派遣では、「必要なときに、必要な専門スタッフを、必要とされる期間だけ」活用できる。スリムかつ合理的な経営を行おうとする企業にとってみれば、非常に効率の良いシステムと言えよう。

 

人材の「適材適所」を図っていく必要性

一般論として、社内にある業務のなかで派遣スタッフにうってつけなのが、「継続的に発生する定型業務」あるいは「一時的に発生する定型業務」である。俗に「アドミニ」と言われる仕事については専ら派遣スタッフに任せ、正社員や契約社員は、コア業務、あるいは専門業務に専念させようというのがいまの時代、まさに求められている戦略的な人材マネジメントである。

例えば、こんな場面で派遣スタッフを活用するケースが多くみられる。

・会社の成長、業務量に対して、人員の補充が追いついていかない
・慢性的に業務量は多いが、フルタイムで働く正社員を増員するほどではない
・1人の社員がさまざまな業務を担当していているため、なかなか業務効率が上がらない
・特定の技術・技能・スキルが求められる仕事に、ふさわしい人(ベテラン・スペシャリスト)がいない(不足している)
・取引先との関係や業務の性質上、突発的に短期集中で処理しなければならない仕事が生じる
・月初や月末(期初・期末)など、特定の時期に仕事量が急に増える
・経験やスキルのある社員が、育児・介護のために長期の休暇を取った など

ただ、状況は変わってきていると思う。当初は正社員の補助的な仕事が多かったが、派遣職種の自由化の流れのなかで、徐々に活躍する場が広がり、派遣スタッフ自身も力をつけてきた。これは間違いない。その結果、いままでは社員が行ってきたような業務を、派遣スタッフで固めていく部門も出てきている。特に、営業系の仕事でよく散見される(詳しくは後述)。



派遣スタッフを活用するメリット

派遣スタッフを活用することで得られるメリットは何か?

1.「雇用責任」がない
社員を雇用すると、当然ながら雇い主には「雇用責任」が生じる。具体的に言うと、実際の職場への配置、業務を円滑に行うための教育訓練の実施、さらには福利厚生、評価、動機づけなど、ただ採用して仕事をさせればいいのではなく、雇用者と被雇用者の関係において、さまざまな場面でフォローしていく必要性が出ている。もちろん、簡単に解雇はできないことは言うまでもない。しかし、派遣スタッフについては、派遣元が雇用主となる。そのため、派遣先はこのような雇用責任を負うことはない。派遣先は業務に関してのみ派遣スタッフをマネジメントすればいいわけで、それ以外の負担が軽減される。

2.「募集~配置」までの手間が省ける
また、人材の募集や採用に関しても、正社員を雇うことに比較して大きなメリットをもたらす。通常、人材の採用を行うには「募集」→「選考」→「採用」→「教育」→「配置」といったプロセスを踏む。そして、それぞれの段階で、かなりの時間とコストがかかる。求人難の現在は特にそうだ。しかし、派遣スタッフを活用する場合、派遣先は仕事内容と派遣スタッフに期待する能力、知識・スキルなどを派遣会社に伝えるだけで事足りる。募集から配置に至るプロセスは派遣元が行うので、派遣先は手間をかけずに希望する人材を採用することが可能となる。

3.「総額人件費」が軽減できる
そして、派遣先にとって最も大きなメリットが「人件費」の軽減だ。この場合、人件費といっても単に「賃金(月例給与)」だけではない。社員を雇用するためにかかるさまざまなコスト、すなわち「総額人件費」というものが軽減される。つまり、社員を雇用した場合、月例給与だけではなく、「社会保険料」をはじめ「通勤交通費」「賞与」「福利厚生費」「教育研修費」が必要となってくる。これに、「募集経費」が加わると、ある試算では月例給与の3~4倍ものコストがかかるという。一方、派遣スタッフの場合、月例給与は社員より幾分割高ではあるものの、かかるコストはそれだけ。また、雇用保険や社会保険等の保険関連負担についても派遣会社が負っているので、おおむね、社員を雇用したときにかかるコストの半分以下で済み、総額人件費を大幅にダウンさせることが可能となる。

4.人的パワーの効率的活用・社内活性化
派遣というシステムでは、必要なときに必要な人材を、必要な人数だけ必要な期間、計画的に活用することができる。当該業務の経験者を調達できるので、教育も不要だ。何より、自社にない派遣スタッフの専門的な知識・技術が活用できる。さらに、即戦力となる新しい人材・スペシャリストを補強することで、社内の活性化に大きく貢献する。その結果、正社員にも刺激を与えることができる。このような人的側面における有形無形の効果は計り知れない。

5.派遣活用のバリエーションの広がり
さらに、対象職務が自由化され、「紹介予定派遣」「新卒派遣」そして最近では適材適所に一括して派遣する「トータル派遣」など、派遣活用のバリエーションも大きく広がっている。今後の人材活用の選択肢は、確実に豊かになってきていると言えよう。

このように、派遣スタッフを活用していくことは、人的生産性の向上のみならず、雇用形態の多様化の流れのなかで、企業の人事システムのあり方そのものを変えていくことになると思われる。

 

マクロレベルでの派遣スタッフ活用も

何より「ダイバーシティ」や「ワークライフバランス」が求められている現在にあって、これからの人材マネジメントのなかで、「多様な働き方」そして「労働力ミックス」は極めて重要なキーワードとなっている。そのなかでも、派遣スタッフを戦略的に活用できるかどうかが、その成否を左右するといって過言ではない。思えばこの数年間で、人材派遣に関するさまざまな法律が改正され、派遣スタッフをより戦略的に活用するための舞台は整ってきた。さらに、1つの仕事に1人の派遣スタッフをあてるといったミクロレベルでの活用方法から、今後はプロジェクト単位や部門単位など、マクロレベルでの派遣スタッフ活用を視野に入れた方法も可能となってきた。「労働ビッグバン」の動きもにらみながら、派遣を取り巻く情勢には当分目が離せない。


派遣スタッフ活用のための「要員計画」

「計画」なくては効果も半減

厚生労働省の調査(労働者派遣事業の平成17年度事業報告)によると、派遣スタッフの総数は2006年3月末の時点で約255万人。対前年度比で12.4%アップと、大幅に増加している。そして、実際の稼動スタッフについては約124万人、対前年比39.2%と実に4割も増加しており、最近の派遣スタッフに対する需要の高さを物語っている。

ただ、さまざまな業務で派遣スタッフを活用できるからといって、無計画に受け入れてしまうと、せっかくの外部労働力導入の効果が薄れてしまう。派遣スタッフを、効率よく且つ戦略的に活用していくには、社内の他の人的資源(社員、アルバイト・パート、契約社員・嘱託社員など)との関係を十分に踏まえながら、適切な「計画」を立てる必要がある。それが「要員計画」と呼ばれるものである。

 

「要員計画」をどのように行うか

要員計画とは、企業が効率よく経営活動を行うために、企業全体及び職場・部署・仕事別に、どのような人材がどの程度必要なのかを定める計画のことである。

この要員計画を立てるためには、まず「要員調査」が必要となってくる。要員調査は要員計画を立てるための基本情報であり、各々の「職場」ごとにおける要員ニーズ、そして「会社全体」としての要員ニーズの2つの視点から調査を行うのが一般的だ。その際、以下のような視点で要員ニーズを調べていく。

(1)「職場」ごとの要員ニーズ
1.欠員補充としての要員ニーズ
2.高負荷業務に対応するための要員ニーズ
3.高度な専門性を持った人材に対する要員ニーズ
(2)「会社全体」としての要員ニーズ
4.事業計画・展開による要員ニーズ
新規事業への進出、多角化戦略の推進など
5.労務構成の「歪み」を是正するための要員ニーズ
年齢別人員構成の歪みの是正

まずは、上に記した5つの項目に関して要員ニーズの調査を行う。その次は、各要員ニーズに対してどのような対応を用いていくか、その対策を検討することになる。それを示したのが図2である。

図2:要員ニーズに対する対策(例)

  採用 採用以外
新卒 中途 アルバイト・
パート
派遣スタッフ 異動 業務改善
職場
ニーズ
欠員補充
高負荷対応  
高度専門技術      
会社
ニーズ
事業計画・展開    
労務構成の歪み矯正        
●:メーンとしての対応、▲:サブ的な対応

図2はあくまで一例であるが、例えば「欠員補充」というニーズに対して、メーンは「派遣スタッフ」で対応し、可能であれば「新卒」や「中途」といった社員、あるいは「アルバイト・パート」で補い、さらには「異動」「業務改善」といった採用以外の手段で対応していくといったアプローチがある。また、「高度専門技術」については、「中途」と「派遣スタッフ」を主にしつつ、「異動」も活用して対応しようとしている。このようにして、組み合わせをいろいろと考えながら、要員ニーズに対する対応策のベストな組み合わせを決めていく。

各要員ニーズへの対応が決まったところで、今度はそれぞれの対策別に具体的な立案を行うことになる。これが要員計画だ。要員計画は図3に示したように、「採用」「外部労働力活用」「異動」「業務改善」「教育」について、「いつ行うか」「どの程度行うか」などを決めることである。そして、各計画は部門別に立案され、「部門別要員計画」が立てられていく。それをベースに、最終的には人事部や経営企画部などが中心となって、全社的な見地から各部門の要員ニーズを調整し、最終的な「要員計画」を策定し、実行に移していく。それを要員調査なしに無計画に行っていくと、後で収拾がつかなくなる。場合によっては、事業計画の変更を余儀なくされることもある。

図3:要員計画
図3:要員計画

重要なのは、要員調査に基づく要員計画をきちんと立てること。そうすることで、派遣スタッフを含めた人的資源全体の有効活用が可能となる。何より、やってもらうことが明確となり、その結果、派遣スタッフの活用効果もより高まってくるはずである。

この場合にポイントとなるのが、早期の対応だ。環境の変化が激しく、スピード経営が叫ばれている現在、要員調査→要員計画を的確に行い、すばやく行動として起こすことが現場への対応として、とても重要なことである。


「営業職」における派遣スタッフの活用のポイント

営業の「ジョブデザイン」を明確にする

前述したように、派遣法の改正により「派遣労働」は大きく規制緩和が進んだ。特に、対象業務が原則自由化されたことによって、派遣スタッフの活躍の分野はより一層の広がりをみせている。なかでも、「営業職」における派遣スタッフ活用のニーズは高く、現在では人材派遣会社の大きな柱になっている。次に、「営業職派遣」を戦略的に活用するためのポイントを整理しておこう。

営業職派遣の導入に当たっては、「営業」のどの部分について派遣スタッフに任せるのか、つまり、営業の「ジョブデザイン」を明確にすることがポイントとなる。もちろん営業に限らず、他の職種で派遣スタッフを活用する場合でもジョブデザインを描くことは必要だ。しかし、職務内容が多岐に渡り、対人スキルはもちろんのこと、多様なスキルや知識、能力が求められる営業職の場合、特にこうした「ワークフロー分析」が導入の成否のカギを握ってくる。

 

営業の仕事を「切り分けて対応」していく

なぜなら、営業と言ってもその範囲はきわめて広く、仕事の内容や対象となる顧客、扱う商品の種類などによってさまざまに分類することができるからだ。それを図4では、営業の仕事をプロセスに沿って分類し、それぞれに含まれる主な職務の各場面で、社員と派遣スタッフをどのように活用していけばいいのか、その一例を示してみた。

図4:営業の仕事の切り分け(例)
図4:営業の仕事の切り分け(例)

ここでは、「顧客リストアップ」や「アポ取り」「訪問」「ニーズヒアリング」などのセールスの準備段階において、派遣スタッフの活用が中心となっている。一方、「企画書・提案書の作成」を行い、それをもとに「プレゼンテーション」や「交渉」するのは社員の担当だ。また、商談のクロージングとして「契約書」や「申込書」を作成するのも、社員が中心となって行うケースが多い。そして、契約を締結した後の「納品」や「請求・集金」、その後の諸々の「フォロー」については、再び派遣スタッフがメーンで担当することとなる。

 

「営業職派遣」を活用するメリット

このようにして、社員と派遣スタッフの役割分担を明確にすることができる。注目したいのは、ワークフロー分析をすることにより、「営業活動」のなかでも最も重要な部分、つまり、「企画書・提案書の作成」「プレゼンテーション」「交渉」といった「コア業務」について、自社の社員を集中投下できるという点だ。そして、それ以外の部分に派遣スタッフを充てていく。こうすることによって固定費を削減し、生産性の向上を図ることが可能となっていく。

「営業職」における派遣スタッフ活用のメリットについて、以下のようにまとめることができるだろう。

1.セールスパワーの調整や合理化が可能となる
・「繁忙期」に合わせた労働力の確保
・「顧客特性」に合わせた労働力の確保
・「商品やサービス内容」に合わせた労動力の確保
・「曜日」「時間帯」に合わせた労働力の確保
・「地域展開」のための労働力の確保
2.きめ細かな「営業フォロー」や「販促活動」が可能となる
3.「人件費」の変動費化が可能となる
4.社員を「戦略業務」や「コア業務」に専念させることができる

 

現場でのマネージャーの対応も重要

当たり前のことだが、モノやサービスを提供して売り上げを立てている企業にとって、営業という仕事はその企業の“生命線”とも言うべきものである。その最前線に立つ営業マンにはさまざまなノウハウやスキル、知識、能力などが求められるが、それらを全て社員で満たそうとすることには、かなり大きなリスクが伴う。というよりも、現実的ではない。こうした背景から近年、営業職派遣が注目を集めているわけだが、営業職派遣を効果的に活用するためには、先に示したワークフロー的な分析以外にも、現場レベルで注意すべきポイントが幾つかある。

例えば、「通常の営業フローとは別に、その企業に独自の営業スタイルがある場合」「取り扱っている商品やサービスが特殊で、そのための高度な知識や技術が必要となる場合」などでは、現場のマネージャーの対応が大きなポイントとなる。営業は変化に富んだ仕事である。だからこそ、ここでは現場のマネージャーは自社の独自性を正しく認識した上で、必要に応じてマニュアルを作成したり、あるいはロールプレーイングを実施することによって、派遣スタッフを多面的にフォローすることが求められてくる。


最近話題の派遣活用「事例」

「シニア」の人材派遣広がる~「経験」「専門性」が強み、「料金」も若年層より割安

次に、最近のトピック的な活用例を紹介してみたい。人材派遣市場で、「シニア(中高年)層」の派遣需要が広がり始めているというのだ。少子化などによる若年労働者不足を背景に、人材の確保を目指した企業のニーズがシニアに向かっているからである。とりわけ「2007年問題」と呼ばれる「団塊世代」の大量定年を機に、人材派遣会社の間でもシニアの豊かな「経験」「専門性」をより活かそうと、登録者獲得に向けた動きが活発化している。

新聞報道によると、大手派遣会社の子会社で中高年の人材派遣に力を入れているある企業では、3~4年前からシニアに対するニーズが高まっており、昨年の45歳以上の派遣成約案件数は前年比17~18%伸びたという。こうしたケースは他でも多く伝え聞かれた。何よりシニアの特徴として、若年層よりも派遣料金が「割安」という点が挙げられる。利用企業が人材派遣会社に支払う料金は事務職では若年層が1時間当たり2000円強(首都圏、交通費別)であるのに対して、シニア層では1700~1800円程度(同)と1割以上安い。シニア自身から、「所得は一定額の範囲内で構わない」という声もある。

また若年層の場合、収入重視で「フルタイム勤務」の希望者が多いのが特徴だ。他方、シニア層はそういうフルタイム勤務へのこだわりは少ない。ゆえに、経験・専門性を持ったシニアを活用するについては、柔軟な雇用形態で処遇していく「術」が求められてくる。いずれにしても人材難が続く今後を考えると、おそらくは「パートタイム派遣」といった形で、シニアを活用する企業は増えていくのではないか。

 

金融機関を中心に「主婦」への派遣求人が拡大~条件に制約があるものの、コスト的に“割安感”

次は、人材派遣市場で、これまで活用の進んでいなかった「主婦」に対する求人が増加してきているというニュース。近年の人手不足を背景に、新たな働き手として積極的に確保しようとしている模様である。一般的に主婦の場合、短時間や期間限定など、家事との両立を考慮するために勤務条件に制約が出てくる。ただその分、料金はフルタイムの派遣スタッフよりも“割安感”がある。この点、人件費を抑えたい企業のニーズを取り込めることにつながっている。

例えば首都圏では、利用企業が人材会社に支払う料金は「事務職」で1時間2000円前後。一方、パートタイマーの主婦だと時給単価は1500円~1800円ほどだ。上昇が続くフルタイムの時給と対照的に、おおむね横ばいで推移しており、割安感が強まっている。また、働く理由としてみた場合、主婦の多くが時給単価よりも勤務時間などを重視しており、さらに配偶者控除の適用範囲内に年間所得を抑えたいとの思惑も単価の安定につながっている。まさにこの意味で、派遣スタッフとして格好の“素材”と言えよう。

こうした主婦に対する求人は、近年、業績が回復し、求人ニーズの高まっている金融機関で目立っている。例えば、金融商品の窓口販売強化に関連した事務処理では、月末の10日間を限定、1日4~5時間程度といった勤務条件が多い。あるいは、営業職でも高齢者からの預金獲得を目指して主婦を活用するケースが広がっている。また、生命保険会社などでは、保険料不払いの有無をチェックする作業などのニーズが高くなっている。これだと1日7時間で週5日勤務、2~3ヵ月限定といった条件で、1社当たり10~30人規模の求人を出すことがあるという。

とはいえ、主婦の希望する仕事は「昼間」で「事務職」に集中しており、現実的に彼女たちの望む条件にピッタリと合致するケースは1~2割程度である。しかし、昨今の人材難のおり、短時間でも効率的な働き方を取り入れていけば、主婦活用はさらに広がっていくと予想される。


派遣社員の「事前面接」解禁

能力や人柄を確認でき、雇用の自由度が高まる

最後に。この度、厚生労働省は派遣法を大幅に改正する方向で検討に入ったとのこと。派遣会社から人材を受け入れる際に、企業が候補者を選別できるよう、「事前面接」を解禁する模様である。派遣先企業は候補者の能力や人柄を見極めた上で、受け入れの是非を決められるようになる。既に議論が進んでいる「派遣期間の延長」などとともに、ここには企業側の自由度を高める狙いがあるのは言うまでもない。そもそも現行の派遣法は、一時的に発生した仕事を片付けてもらう“臨時雇用”という発想が前提だ。企業側に事前面接など、派遣労働者を選別する行為を禁止している。それを事前面接を解禁することによって、派遣会社が選んだ候補者の受け入れを企業が拒否でき、新たな人選を求めることができるようになるわけだ。これも、企業側が職場の調和を重視するために、どのような人が派遣されるのか事前に分からないのはおかしいという声に応えたものである。

もっとも、現在でも「顔合わせ会」「職場見学会」などと称して派遣候補者に事前面接を実施するケースがある。ただ、これらは“非公式”のため、現実問題として派遣会社が示した候補者を断りにくかった。事前面接が解禁となれば、派遣先企業だけでなく派遣候補者も職場環境や雇用条件を具体的にチェックできるようになるというわけだ。

問題は、派遣先企業が人材を選別するために、「年齢が高い」「性格が合わない」などの理由で、仕事に就けない派遣希望者が出てくる可能性のあること。労働組合も「年齢や容姿、性格などを理由に派遣社員になれない人が出てくる」と懸念している。いずれにしても、受け入れ先企業ではそうした「誤解」を招かない慎重な対応が不可欠となってくる。

図5:「事前面接」解禁でこう変わる!?
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