企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事マネジメント「解体新書」

「健康経営」の時代
~「コスト」から「投資」へ、健康増進への取り組みを位置付ける(前編)

健康増進の「コスト」を将来への「投資」とする
◆経費がかかる一方、さまざまな理由で効果が見えにくい

「健康経営」に向けた官民の動きが活発化する一方、実際に取り組みへの第一歩を踏み出すことは、まだ難しいようだ。具体的には、「コスト(費用対効果)」の問題が大きい。例えば、帝国データバンクが2015年に発表した『従業員の健康管理に関する企業の意識調査』を見ると、健康保持・増進対策を実施する時、どのような問題点があるかをたずねた結果は、「経費がかかる」が 37.7%で最多となった。以下、「効果的な実施方法が不明」「時間確保が困難」「費用対効果が不明」「適当な人材確保が困難」などが20%台で続いている。また、自由回答でも、「従業員の健康管理はとても重要だと思うが、経費を考えると限度がある」(卸売業)や、「コストがかかるという認識を従業員から得られにくいことが、費用対効果が感じられない要因」(建設業)といった意見に代表されるように、経費がかかる一方で、さまざまな理由で効果が見えにくいことを問題点に挙げる企業が多い。

【図表5:対策を実施する際の問題点】

経費がかかる 37.7%
効果的な実施方法が不明 23.9%
時間確保が困難 23.4%
費用対効果が不明 21.6%
適当な人材確保が困難 20.9%
労働者の関心が得られない 17.4%
設備・場所の確保が困難 17.3%
その他 1.8%
問題はない 13.5%

*図表5:『従業員の健康管理に関する企業の意識調査』(帝国データバンク・2015年)

◆「健康経営」推進に向けたPDCAサイクルを回す

いずれにしても、「健康経営」を推進するには、一定の「投資」が必要であることは間違いない。また、投資であるからには、企業の利益と従業員の健康の両方に利益をもたらすものでなくてはならない。今後、「健康経営」をよりいっそう推し進めていくには、コストと施策の両面について、経営陣と従業員の双方から理解と関心が得られるよう、運営体制と内容を検討する必要がある。そのステップとして、以下のような視点に基づいたPDCAサイクルを設定することが有効である。

  1. 改革ビジョンに基づいて、課題を可視化する
  2. 効率的な改革ターゲットの優先順位付けを行い、リソース配分を検討する
  3. 施策を実施・展開して、ターゲットとその周辺にも改善を波及させる
  4. 効果検証を経て、次の課題改善への取り組みを構築する

「健康経営」を展開する際、実際にどのような取り組みが効果的なのか、推進体制はどうあるべきかは、各社の課題や改善目標によってさまざまである。「健康経営」推進に向けたPDCAサイクルを立案する上では、経済産業省が公開している「健康経営チェックリスト」を参考にするといいだろう。

【図表6:健康経営チェックリスト】

大項目中項目小項目チェック
健康経営の理念・方針と組織づくり 理念・方針の設定 健康経営を経営理念に位置づける  
健康経営を経営方針に位置づける  
経営方針を社内に示す  
組織体制づくり 従業員の健康保持・増進を担当する部署の設置や職員の配置を行う  
専門資格を持つ職員を配置するとともに、その能力向上を図る  
従業員の健康保持・増進に関する業務報告を経営者に対する報告事項とする  
健康経営を実践する 従業員の健康状態を把握する 保有する健康情報を分析する  
分析結果から、自社の健康課題を検討する  
健康づくり計画を立てる 課題に応じた保健事業を計画する  
評価指標を設定する  
健康保持・増進の取組の全体を俯瞰し、企業として実施できる内容を整理する  
健康保険組合や企業内スタッフでは対応が難しい部分については、外部事業者を活用する  
社員に働きかける 職場の環境改善を図る  
生活習慣改善のモチベーションを向上させる取組や行動変容を促進する取組を実施する  
健康保険組合や企業内スタッフでは対応が難しい部分については、外部事業者を活用する  
健康保険組合等との適切な連携(コラボヘルス)について 健保等が行う「データヘルス計画」の策定、実施において適切に連携する  
企業、健保等、従業員等などのそれぞれの役割や現状の取組状況を整理する  
従業員の健康情報を適切に取り扱う  
取組を評価する PDCAが機能する体制を構築、維持する  
プロセス・マネジメント評価指標、アウトプット評価指標、アウトカム評価指標によって評価をする  
継続的に従業員の健康維持・増進に取り組む  

*図表6:『企業の「健康投資」ガイドブック』より(経済産業省)

 


記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

人事マネジメント「解体新書」第118回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは【後編】
「公的資料」を使って「働き方改革関連法」を徹底理解する
近年、労働に関する「法改正」が進展する中、人事担当者の「法律」(労働関連法令)への正しい理解と適切な対応は、需要なスキルとなっている。「後編」では「働き方改革関...
2019/11/21掲載
人事マネジメント「解体新書」第117回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは【前編】
厚生労働省などの「公的資料」をいかに読み抜くか
近年、「働き方改革関連法」の施行や「パワハラ防止法」の成立に代表されるように、人事部の業務に関連する「法改正」の動きが一段と活発化している。そのため、人事の仕事...
2019/11/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第116回
「パワー・ハラスメント防止」を義務付ける関連法が成立、
企業は「パワハラ防止法」にどう対応していけばいいのか?【後編】
職場での「パワー・ハラスメント(パワハラ)」の防止を義務付ける関連法が2019年5月29日、参院本会議で可決・成立した。大企業には2020年4月から、中小企業は...
2019/10/22掲載

関連する記事

メンタルヘルス・健康経営セミナー
職場の活力アップを考える
人材不足、多様性、働き方改革など、近年は人材に関する環境が大きく変化。職場の活力を左右する職場のメンタルヘルス、産業保健に関心が集まっている。どうすれば従業員が...
2020/03/02掲載注目の記事
『健康経営会議2019』開催レポート
2019年8月28日、経団連会館において、健康経営会議実行委員会主催の「健康経営会議2019」が開催された。健康経営とは、従業員の健康を経営課題の一つとして捉え...
2019/10/04掲載イベントレポート
『健康経営会議2017』開催レポート
2017年9月4日、経団連会館において、健康経営会議実行委員会の主催による「健康経営会議2017」が開催された。健康経営とは、経営の観点から戦略性をもって働く人...
2017/10/16掲載イベントレポート
森永雄太さん:
ただ「健康増進」を唱えるだけでは届かない 
健康経営を従業員のやる気につなげる「ウェルビーイング経営」の考え方(後編)
従業員の健康につながる施策に会社をあげて取り組む「健康経営」の考え方が定着しつつありますが、一方で若い人ほど「健康」という言葉を軽くとらえてしまいがちであるのも...
2017/08/09掲載キーパーソンが語る“人と組織”
森永雄太さん:
ただ「健康増進」を唱えるだけでは届かない 
健康経営を従業員のやる気につなげる「ウェルビーイング経営」の考え方(前編)
従業員の健康増進につながる施策に会社を挙げて取り組む「健康経営」の考え方が定着しつつあります。少子化が加速し、労働人口が減り続ける中、一人ひとりが長く働き続けら...
2017/08/02掲載キーパーソンが語る“人と組織”

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

あなたの会社の健康労務費見直しませんか? 従業員の自律的なキャリア開発を支援する

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


ピンチをチャンスに。<br />
新型コロナウイルス対策を機に中小企業も時代を見据えた働き方へ

ピンチをチャンスに。
新型コロナウイルス対策を機に中小企業も時代を見据えた働き方へ

働き方改革が進むなか、2020年4月から施行された中小企業の時間外労働...


「採用」×「AI」で、採用成果を実現する これからの人事に必要なもの

「採用」×「AI」で、採用成果を実現する これからの人事に必要なもの

HRの領域ではその時々、トレンドとなるワードがあります。最近は「AI」...