人事マネジメント「解体新書」

人材難の時代における「ヘッドハンティング」活用法
~「即戦力」をサーチする際の留意点とポイント(後編)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スペックの高い「即戦力」を求める場合、求人メディアよりも「ヘッドハンティング」を利用した方が、より確実にピンポイントの人材を探し出すことができる。問題は、求人メディアのようなシステムと違い、ヘッドハンティングは人と人とが直接会って、詳細を詰めた上で合意を行い、採用が決定するという非常に“アナログ”かつ“手間暇”のかかる手法であることだ。そのような特徴があるので、ヘッドハンティングを開始し入社が決まるまでには、留意しなければならないいくつかのポイントがある。この点を曖昧にすると、後にトラブルが起きることになるので、採用担当者としては注意が必要だ。「後編」では、ヘッドハンティングを依頼する際の留意事項、そして入社に至るまでの各ステップにおける注意点など、実務に特化した項目について解説する。

「ヘッドハンティング」を依頼する際の留意点
◆ヘッドハンターに伝える「基本事項」とは?

サーチ型の人材紹介会社に「ヘッドハンティング」を依頼する際、最も需要なことは求める人材に関する諸要件を正確に伝えることである。具体的には、以下の事項(会社概要、求める人材要件、待遇、期日)に関して、正しくヘッドハンターに伝えることだ。

【ヘッドハンターに伝える「基本事項】】
会社概要 ・最初に会社概要の説明から入る。企業理念、事業内容、現在の状況から始め、続いてなぜ外部からの人材が必要なのか、なぜヘッドハンティングを利用するかなど、趣旨説明を行う。
・会社概要に関しては、事前にパンフレット、アニュアルレポートなどを用意しておく。
求める人材要件 ・ヘッドハンティングを考えている人材の担当する職務の内容や職位・職責、求める人材の経験・経歴・能力要件などを、具体的に伝える。ここでヘッドハンターに、人物イメージ・スペックを理解してもらう。
待遇 ・想定している報酬を提示する。金額については、年収○○○万円前後とはっきり提示することもあるが、前職の年収の1~2割アップといった形でも構わない。
期日 ・いつ頃までに採用したいのかを伝える。採用が決まった人材の入社する都合(タイミング)の問題もあるので、事前にいつ頃までに採用の目途を付けたいのかをはっきりさせることが大切だ。

事業を取り巻く環境変化のスピードが速くなっている近年では、企業は「即戦力」を強く求めており、採用する人材に対して妥協しない傾向がある。そのため、特に重要なポジションであれば、採用をあせらずに時間をかけて、適切な人材を待つ姿勢も重要だろう。ただし、それも時と場合によりけり。「いつまでにこのポジションの人材が必要だ。しかし、納得のいく候補者が出てこないようであれば、外部からでなく、内部からの登用も考える」といったケースを想定している場合は、事前にその旨をヘッドハンターに伝えておくことが欠かせない。

◆「求める人材要件」には、「優先順位」を設ける

「求める人材要件」はできるだけ具体的に示し、ヘッドハンターに伝える。その際、「優先順位」を設けることがポイント。現実問題として、企業が求める人材要件を100%満たす人材を紹介することは極めて難しいからだ。そこで優先順位を付け、どうしても妥協できない「必須要件」と、あれば望ましいがなければ「妥協できる要件」に分けて、提示することである。また、「必須要件」はあまり多くせず、数点に絞ることだ。そして、残りは妥協することも可能とすれば、ヘッドハンターもサーチに取り掛かりやすい。

人材要件を厳しくしたために、人材をサーチする際、それをクリアすることばかりが優先されてしまい、人柄やコミュニケーション能力といった広くビジネスで求められる要素が後回しになってしまうことがある。そうすると仕事はできるが、職場の仲間としてはふさわしくない、ということにもなりかねない。必須要件のポイントを絞り込むことは、求める人材要件に合った適切な人材の「母集団」を広げることにつながるのだ。

◆ヘッドハンティング会社との契約に関して

ヘッドハンターとの打ち合わせが終了した段階で、ヘッドハンティング会社から案件を請け負うことが可能かどうかの連絡が入る。そして、正式に人材サーチを依頼することが決定したら、具体的な契約に入る。「人材要件」「人材サーチ期間」「費用(報酬)・支払い方式」を明確に文書(契約書)にして、契約を取り交わす。実際に契約したら、その案件に関する「窓口」をお互いに確認する。なお、ヘッドハンティング会社では、契約を交わす代表者と実際に担当するヘッドハンターが異なるのが一般的。そのため、サーチがスタートした後、お互いの窓口を混乱させないよう注意を要する。

契約の際には、トラブルを起こさないために、以下の点について留意する必要がある。

【トラブル防止のための留意点】
費用(報酬)・支払い方式 ・人材サーチをする時点で、しっかりと「費用(報酬)・支払い方式」に関して契約書を交わす。仮に契約書を交わさない場合であっても、人材紹介会社から出された提案を確認し、契約の基本内容について、「覚書」を交わしておくことが重要だ。
・「成功報酬方式」の場合ではもめることは少ないが、問題となるのは、「着手金方式(リテインサーチ)」で、採用決定者が出る前に費用(報酬)を全額支払ってしまった場合だ。報酬の全てを前金で支払ってしまったのに、満足のいく人材が紹介してもらえなかったら、“支払損”になってしまう。
・そのような場合を想定し、契約時に、「求める人材が見つからない場合には、どう対応するか」をきちんと契約書に明記しておく。
・まとめて数名もの決定者を出す前提の「一括サーチ契約」を「着手金方式」で結ぶ際には、より注意が必要となる。
ヘッドハンター ・通常は一人のヘッドハンターが専任で対応するが、転職などで交代する場合もある。担当者が代わってしまったら、誰に引き継がれるのかを、まず直接確認する。
・新しい担当者が、どこまで案件内容を理解しているか分からないこともある。新しい担当者とはできるだけ早いうちに直接会って、再度打ち合わせの機会を持つようにする。
・担当者の仕事ぶりに満足できないケースがある。その場合、案件が「成功報酬方式」なのか「着手金方式」なのかで、取るべき対応が異なる。
・「着手金方式」で前金を支払ったにもかかわらず、ヘッドハンターの仕事ぶりが悪かったら、依頼したヘッドハンティング会社に連絡して、場合によっては担当者を代えてもらうことを検討する。
・難しいのは「成功報酬型」。依頼する側も、あまり強く主張できない。この場合、どの程度まで仕事が進んでいるのか確認することが賢明だろう。進捗状況を確認ことによって、ヘッドハンターのサーチへの行動促進につながっていくことが期待できる。

 


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

人事マネジメント「解体新書」第105回
「健康経営」の時代
~「コスト」から「投資」へ、健康増進への取り組みを位置付ける(前編)
従業員の健康は、企業経営を支える重要な基盤である。しかし、過重労働による心身の不調や生活習慣病の増加、それらに伴う医療費負担の増加など、その基盤を揺るがすリスク...
2017/04/20掲載
人事マネジメント「解体新書」第104回
人材難の時代における「ヘッドハンティング」活用法
~「即戦力」をサーチする際の留意点とポイント(後編)
スペックの高い「即戦力」を求める場合、求人メディアよりも「ヘッドハンティング」を利用した方が、より確実にピンポイントの人材を探し出すことができる。問題は、求人メ...
2017/03/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第103回
人材難の時代における「ヘッドハンティング」活用法
~「即戦力」をサーチする際の留意点とポイント(前編)
企業のM&Aが活発化し、ビジネスモデルの変化が早くなっている現在、事業展開のスピード化・専門化に対応するため、「即戦力」の人材に対する中途採用ニーズが高まってい...
2017/03/06掲載

関連する記事

人材紹介の「ビジネスモデル」
「登録型」「サーチ型」それぞれの特徴や料金体系など、人材紹介の基本的なビジネスモデルと仕事スタイルを紹介する。
2016/08/31掲載よくわかる講座
中途採用の「実務」【3】募集手段の選定
採用ターゲットに適合した効率的な募集手段とは?主な募集手段の特徴と活用について、最新の情報をもとに解説。効果的な人材募集広告表現のポイントも紹介する。
2016/07/15掲載よくわかる講座
転職意思のない人材をその気にさせるのは、至難の業
人材紹介とヘッドハンティングの違い
人材紹介とよく似たサービスに「ヘッドハンティング」があります。いずれも企業からのオーダーに従って適切な人材を紹介するというものですが、大きな違いは、人材紹介がも...
2012/03/05掲載人材採用“ウラ”“オモテ”
コンサルタントを本気にさせる、求職者の姿勢とは
人材紹介会社のほとんどが、「転職者に直接会うこと」を転職支援の第一歩としています。しかし、転職希望者の大半は在職中で忙しく、来社を待っていてもなかなか会うことが...
2011/10/03掲載人材採用“ウラ”“オモテ”
石原久美さん
ヘッドハンターが教える「高く売れる人」の法則
ヘッドハンターは有能な人材をどのように探し、「高く売れる人材」「タダでも採らない人材」をどこで見分けるのでしょうか。また、企業がヘッドハンターを使うときに気をつ...
2005/02/21掲載キーパーソンが語る“人と組織”
【用語解説 人事辞典】
嫁ブロック
貴社の課題解決ノウハウが満載!! 『日本の人事部』注目のセミナー特集
会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。会員ができること
ミスマッチの応募にお困りの採用担当者様へ

記事アクセスランキング

注目コンテンツ


新卒採用支援/内定者フォロー特集

新卒採用から内定者フォローまでを支援するサービスやソリューションをご紹介します。



『日本の人事部』注目のセミナー特集

人事担当者必見の注目のセミナーをご紹介。貴社の人事課題の解決や、情報収集にお役立てください。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。