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人事マネジメント「解体新書」

「アクションラーニング」で戦略実行力を高める(後編)
~組織変革を実践的・効果的に進めていくための方法とは~ (1/3ページ)

2016/03/24

前編では、アクションラーニングに関する考え方と実務的な対応について見てきたが、アクションラーニングが企業経営のさまざまな場面・目的に対応できることをお分かりいただけたことと思う。後編では、「組織変革」「次世代リーダー育成」「業績向上」など、アクションラーニングにおける代表的な活用事例を紹介しながら、そのポイントを解説する。

事例A社:組織変革~トップダウン型組織からボトムアップ型組織へ
A社は中堅の食品メーカー。創業者の強いリーダーシップの下、これまで安定的な経営を行ってきたが、事業の多角化、グローバル化を進めていくに当たり、現場の改善・改革の動きや、ミドルマネジメントの力不足が問題視されるようになっていた。組織のあり方をこれまでのトップダウン型組織から、ボトムアップ型組織へと移行していくことが、喫緊の経営課題となってきたのだ。そこで、組織変革を速やかに実現するための恒常的な取り組みとして、アクションラーニングをスタートさせた。
◆トップマネジメント交代を機に、アクションラーニングを導入

A社は財務指標的には大きな問題はなかったものの、人口減少が進む国内市場ではこれ以上の成長が期待できないと判断。事業の多角化、さらにはグローバル化への展開を急いでいた。ただ、これまで創業者が強いリーダーシップを発揮し、マネジメントしてきた典型的なトップダウン型組織だったため、現場発の改善・改革の動きや自発的な動きが少なく、ミドルマネジメントの力不足が問題となっていた。これを打開するには、今までの強力なトップダウン型組織から、ミドルマネジャーのリーダーシップの下、職場レベルで積極的な問題解決を図るボトムアップ型組織へと生まれ変わる必要があった。そこで創業者であるトップマネジメントの交代を機に、経営コンサルティング会社の協力の下、アクションラーニングを導入し、組織変革を進めていくことにした。

◆従業員サーベイでテーマを決定、1年間を通じて活動を行う

プログラムのテーマは、「職場単位で組織力を活かし、日常の問題解決を図る」。職場単位で行うため、全社員が参加する。部門長がスポンサーとなり、部門間のアクションラーニングを支援。テーマごとに各組織横断の5~10人が1グループとなり、年間を通じて活動を行った。また、プログラムの展開に当たっては、以下の点を重視した。

  • 部門内の部・課長クラスがグループリーダーとなり、現場の課題解決をリードできるようにする
  • 従業員サーベイを基に、職場全員で課題を事実ベースで話し合い、アクションプランの立案、実行につなげる
  • 定期的にレビュー(見直し)を行い、次年度の活動につなげ、アクションラーニングを日常的な活動としていく

アクションラーニングは、次のようなステップを踏んで実行された。

1.従業員サーベイ ・各職場の活性度、従業員満足度を測定
2.サーベイのフィードバック ・全社傾向を把握すると同時に、各部門の傾向を把握。その結果を、各部門長に対してフィードバックを行う
3.テーマの決定 ・部門長、部門内の部・課長、有志メンバーが集合し、部門の課題を検討し、アクションラーニングとして取り上げるテーマを決定する
4.グループの編成 ・部門内全員を集め、従業員サーベイの結果を報告。アクションラーニングのテーマを共有する
・各テーマごとに参加メンバーを募集し、グループ分けを行う
5.ミーティング ・グループごとに分かれ、解決策を検討する(職場改善・改革ミーティング)
・解決策は、部門内で完結でき、現有資源で解決できることとする
6.プレゼンテーション ・全員が集合し、グループごとに検討した解決策を発表する
・部門長は、その場で採否を行う
7.実行 ・各グループの主導の下、関係者の協力を得ながら解決策を実行に移していく
8.レビュー ・全員が集合し、結果のレビューを行う
9.従業員サーベイ ・従業員サーベイで、1年間の解決策への取り組みの成果を振り返る(検証する)
・その結果を受け、次年度のアクションラーニングのテーマを検討する
◆各職場で自発的な改善・改革プロジェクトが始動。マネジメント層のリーダーシップ行動も強化

A社のアクションラーニングの特徴は、従業員サーベイの結果を基にテーマが決定されること。そして、全員参加型の職場改善・改革ミーティングを開催し、日常的に行われ、実効性の高いテーマが扱われることだ。このようなアプローチを取るのは、ボトムアップ型組織を実現するという目的があるからに他ならない。事実、今回のアクションラーニングへの取り組みにより、各職場で自発的な改善・改革プロジェクトが活動し始めた。

また、マネジメントへの影響も大きかった。部・課長クラスがグループ活動のリーダーとなり、日常業務とは異なるメンバーをリード・マネジメントする経験をすることによって、リーダーシップ行動がより強化された。

◆全社的、継続的に行われることで「学習する組織」が実現

A社でこのような効果が出たのも、テーマ決定や参加メンバーの問題意識を高めるために毎年行っている従業員サーベイをうまく活用しているからだ。そして、1年間の解決策への取り組みの成果を振り返り、良い解決策は他部門でも参考にできるよう、全社的に活動内容を公開するといった工夫が、アクションラーニングの成功につながっている。

このようにアクションラーニングが全社的、かつ継続的に行われることにより、A社ではまさに「学習する組織」が実現しつつある。トップダウン型組織から、ボトムアップ型組織へと移行するためにスタートしたアクションラーニングだったが、予想以上の成果を生み出すことになった。

 


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