人事マネジメント「解体新書」第86回
「ストレスチェック」義務化に伴う実務にどう対応するか【後編】
~導入企業に見るストレスチェックの実際と活用方法[前編を読む]
2015年12月1日から導入される「ストレスチェック制度」。『前編』では、法施行に向けてどのような準備を行い、何を実施すればいいのかを見てきた。『後編』では、既に「ストレスチェック」を実施している2社の事例を取り上げ、どのような狙い・目的を持ってストレスチェックを導入したのか、またストレスチェックの結果をどう活用しているのかなど、運用に当たってのポイントとなる事項を紹介していく。
「ストレスチェック」導入のために必要な準備とは
◆社員にはストレスチェックを受けない自由がある
「ストレスチェック」を実施する際、社員にはストレスチェックを受けない自由が与えられていることを忘れてはならない。多くの社員はストレスチェックの結果を、必ずしも経営者や上司に対して申告しようとは思わないだろう。なぜなら、結果の内容によっては、自分自身の処遇や将来のキャリアに対して、マイナスになるという不安があるからだ。
事実、厚生労働省が2014年12月17日に公表した「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」でも、ストレスチェックを受けた人たちが以下のような「不利益」を職場で被る恐れがあることを懸念している。
- 解雇されてしまうこと
- 期間を定めて雇用されている人が、契約を更新してもらえないこと
- 退職を勧奨されること
- 不合理な配置転換や降格を命じられること
- その他、労働法に反する差別的な扱いを受けること
そのため、以下の点についてはストレスチェックを受ける人たちの自由であることを、制度導入前に再確認し、周知徹底しておく必要がある。
- ストレスチェックを受けるかどうか
- 面接指導を申し出るかどうか
- ストレスチェックの結果を会社側に知らせるかどうか
- ストレスチェックに関する相談をどこで受けるか
◆社内外のスタッフとの緊密な連携と対応が不可欠
「ストレスチェック制度」を円滑に導入していくためには、自社の産業保健スタッフ、ストレスチェックを企画・実施する担当者(医師・保健師・一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士)、面接指導を行う産業医などとの緊密な連携と対応が不可欠である。その際、社員一人ひとりのストレスチェックの結果といった個人情報は、各担当者が法令などに従い、適正に管理していかなくてはならない。その中でも、面接指導を行う産業医などの果たす役割は大変重いと考えられる。
周知のように、企業には社員に対する健康への影響がないようにする安全配慮義務を負っている。2014年3月24日の最高裁判所の判例でも、健康の不調が想定される場合には、社員が申告しづらいことも理解した上で、業務を軽減するなどの措置を講じる必要があるとしている。今後、ストレスチェックで体調不良を申告していた場合には、積極的な対応を取る必要が出てくるのは間違いないだろう。そのためにも、十分な見識・経験を有する医師と契約を結ぶことが、企業にとって重要な課題である。
次ページからは、「ストレスチェック義務化法案」の施行に先行し、ストレスチェックを導入した企業2社の事例を取り上げていく。
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