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人事マネジメント「解体新書」

「人事部門のグローバル化」を実現する
~人事組織と機能をどう構築・再編していくか?【前編】 (1/2ページ)

2014/12/17
少子化による人口減少などの影響もあって、今後、国内市場が縮小していくことが予測される。そのため、世界市場での生き残りをかけ、事業のグローバル化が一段と進展している。しかし、それを人材・組織面から支える人事部門のグローバル化に関しては、まだ不十分という企業が少なくない。では、グローバルレベルでの人事組織の構築と機能再編をどのように進めていけばいいのか。また、そこに立ちはだかる課題とはどんなもので、どう克服していけばいいのか――。『前編』では、人事部門のグローバル化を実現するために必要な事項について、改めて整理していく。
「グローバル人事」とは何か?
◆「グローバル企業」の定義

グローバル化は、日本企業に限ったことではない。近年、欧米企業を中心として、グローバルレベルでの人事組織、機能・体制の見直しに着手する企業が増えている。日本では、大手総合メーカーのケースが話題となったが、最近では海外に直接進出していなくても、M&Aなどでグローバル展開を図っている企業が増えている。そうした点からも、事業のグローバル化と併せて、人事部門のグローバル化は早急に対応すべき課題となっている。

その前に、「グローバル企業」の定義を確認しておこう。グローバルとは、国境・国籍がなくなった状態のことを指す。グローバル企業といっても、海外への進展度合い(関わり度合い)によって、大きく三つの段階に区分けすることができる。

【国際企業】
第一段階は「国際企業」と言うべきもの。日本を拠点に取引の一部や生産・販売を海外で行うが、その主体はあくまで日本国内にある企業である。
【多国籍企業】
第二段階は「多国籍企業」。生産・販売や収益の基盤が、複数の国・地域にまたがっている企業である。
【グローバル企業】
第三段階は本当(狭義)の意味での「グローバル企業」。海外拠点が大きく増えたことで、本社が日本国内とは限らない。国境・国籍を越えたボーダレスで生産・販売が行われることになり、海外展開を図る企業にとっての最終形と言えるものである。
*なお、日本で言われている「グローバル企業」は、「国際企業」あるいは「多国籍企業」のケースを指していることが多い。

ここで大切なのは、自社が目指すグローバル企業の形態が、国際企業なのか多国籍企業なのか、それとも国境・国籍を越えたボーダレスの企業なのか、ということ。そして、短期(3~5年)、中期(5~10年)、長期(10年~)といった経営戦略の下、どのような展開を考えていくのかを定めることである。なぜなら、人事部のグローバル化のあり方も、その方針によって決まってくるからだ。

◆「グローバル人材」とは

目指すグローバル企業の形態が定まれば、それに基づいて自社で必要となる「グローバル人材」も決まってくる。日本では一般的に、「日本人従業員で海外に派遣されるスタッフ」のことをグローバル人材とするケースが多いようだが、それだけではないことは明らかだろう。あくまで、「自社のグローバルビジネスを遂行するために必要となる人材」のことである。

人材のスペックとしては、「どこで採用するか(日本or海外orグローバル)」と「どこで活用するか(日本or海外orグローバル)」というフレームの中で整理することができる。具体的には、「日本採用×日本活用(日本ローカル人材)」、「日本採用×海外活用(広義のグローバル人材)」、「海外採用×日本活用(広義のグローバル人材)」、「海外採用×海外活用(海外ローカル人材)」、そして「グローバル採用×グローバル活用(狭義のグローバル人材)」の五つに分類することができる。

◆新しいステージに来た「グローバル人事」

先述の通り、「グローバル企業」の定義を、海外への進展度合い(関わり度合い)によって三つに分類したが、ここで一度、日本企業の海外への進出を「時間軸」の中で整理してみることにしよう。

【1960年代~】
最初の海外進出は、今から約50年前の1960年代にまでさかのぼる。当時は自前で海外拠点を作り、運営・管理していくケースが大半だった。その頃は、拠点運営は本社から派遣された駐在員によって行われた。そのため、拠点では厳密なガバナンスを構築しなくても、属人的な能力で何とか経営を行うことができた。
【1980~90年代】
日本経済が世界の中でも大きなプレゼンスを占めるようになってきた1980~90年代になると、製造業の生産部門を中心に、現地化がどんどん推進されていった。“製造現場の空洞化”とも呼ばれた時代である。この段階になると、各国での人材育成が進み、駐在員からローカル採用社員(ただし、非本社社員のことが多い)への権限移譲が模索されていった。
【2000年代~】
2000年以降、グローバル人事は新たなステージを迎えている。新興国の台頭、グローバル競争の激化により、グローバルで展開する日本企業は日本国内の競争より、世界の中での生き残りをかけて事業戦略を見直さなくてはならない状況に追い込まれているのだ。このような状況では、自前だけの海外展開には限界がある。そこで、多くの企業がM&Aによる外国企業の買収を進め、世界シェアの獲得を目指すようになった。

ただここに来て、新たな問題が発生してきた。M&Aを行った結果、これまでの日本企業の文化・価値観、仕事の進め方・取り組み姿勢などと異なる人材を多く取り込むことになったからだ。M&Aされた企業からは、「人事の基本ポリシーはどうなっているのか」「評価・報酬は誰が決めるのか」「権限はどこまで与えられるのか」など、日常的な業務、マネジメント面での質問・問い合わせが相次ぐようになる。場合によっては、経営層に対して不平・不満を訴えてくることもある。そのために自主性の尊重という名の下、放任するような人事マネジメントが行われるなど、ガバナンスの面でさまざまな問題が生じるケースが出てきた。

これが一つの契機となり、本格的にグローバルでの人事ポリシーや人事制度の策定の必要性が広く認識されるようになった。改めて、「グローバル人事」は新しいステージに到来したということであり、それを人材・組織面から支える人事部門のグローバル化にも大きな注目が集まっている。



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