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『ビジネスガイド』提携

厚生労働省発! 予防から事後対応まで
「パワーハラスメント対策導入マニュアル」の具体的活用法と留意点 (1/4ページ)

弁護士 野口 大/弁護士 大浦 綾子

2016/1/8

厚生労働省は、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組みを推進するため、「パワーハラスメント対策導入マニュアル~予防から事後対応までサポートガイド~」(以下、単に「マニュアル」という)を作成し、2015年5月15日にこれを公表しました。

パワーハラスメントについては、80%以上の企業が「職場のパワハラ対策は経営上の重要な課題である」と考えていますが、予防・解決のための取組みを行っている企業は全体の45.4%です。特に、従業員数100人未満の企業では18.2%に留まり、約20%の企業が「現在は行っていないが取組みを検討中」と回答しています(「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」2012年度)。

このマニュアルは、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組みを促進する目的で作成されるものです。マニュアルには、従業員アンケート調査のひな型、研修用資料、パワハラ相談対応者が使える相談記録票など、参考資料も豊富に収録されています。

以下ではこのマニュアルの重要ポイントを紹介しつつ、留意点等を解説することとします。

1 パワーハラスメントのリスク

パワーハラスメントが発生すると、被害者のモティベーションが低下し、加害者は信用が低下して損害賠償請求されるリスクを負い、企業も損害賠償請求されたり人材流出のリスクを抱えたりすることとなります。

(1)被害者のモティベーションの低下・心身の状況の悪化

photo

単にモティベーションが悪化するだけではなく、程度のひどいパワーハラスメントの場合には、それが原因で精神疾患を発症し、労災認定されることもあります。

心理的負荷による精神障害の認定基準(平成23年12月26日付基発1226第1号)によれば、精神障害が「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」ことに起因する場合には、労災認定される可能性が高いことが明記されています。同基準によれば、例えば、

  • 部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた場合
  • 同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた場合
  • 治療を要する程度の暴行を受けた場合

などは、心理的負荷の強度が強となる(その要因だけで労災認定される可能性が高くなる)とされています。2013年度精神障害の労災補償状況において、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の件数が55件に増加して、具体的な出来事別の支給決定件数のうち最も多い類型となっていることも留意すべきです。

(2)加害者の社内信用低下、懲戒処分や損害賠償請求を受けるリスク

加害者も、パワーハラスメントを行ったということで社内信用が低下しますし、程度がひどければ当然懲戒処分の対象となったり、被害者から損害賠償請求されたりするリスクを負うこととなります。

(3)企業にとっての人事労務上あるいは法的リスク

パワーハラスメントの予防を怠り、蔓延する職場環境を放置していれば、貴重な人材も流出しますし、優秀な人材の採用も困難となります。近時はネット等で情報は一瞬で拡散され、「パワーハラスメントの蔓延するブラック企業」というイメージがつくと、企業の信用が大きく低下します。

法的にも、違法な言動による退職勧奨や、内部告発への報復的対応等企業が当該パワーハラスメントに積極的に加担している場合はもちろん、そうでない場合、例えば上司から部下への日常的な言動が問題とされる場合でも、使用者責任あるいは安全配慮義務違反として、比較的簡単に損害賠償義務が認められることに留意が必要です。

(4)その他のリスク

マニュアルでは指摘されていませんが、実務的には、被害者がパワーハラスメントを受けたことを契機に、戦闘的な外部労組に加入して同労組が介入してきたり、多額のサービス残業代請求のトラブルが発生したりする等、別の紛争に発展することがよくあります。パワーハラスメントの被害者は上司に恨みを持ちますので、その気持ちが着火剤となって、様々な人事労務上の紛争に発展する危険性があるのです。


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