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城 繁幸さん~人事部が社員の評価をしてはいけない

人事制度面での大改革と言われる「成果主義」。10年後には日本でも常識になっているかもしれない。だが、この欧米発のシステムが企業内に混乱をもたらすことはないのか。成果主義で成功する企業と失敗する企業はどこが違うのだろうか?

売上高1兆円、経常利益1000億円の絶頂から、わずか十数年で無残な「負け組」へ――。日本を代表するリーディングカンパニーの富士通があっという間に転落したのは、同社が1993年に鳴り物入りで導入し話題になった「成果主義」が一つの原因ではないかと見られている。目標シートも書けない管理職、主導権を握ろうとする人事部、やる気を失っていく社員たち……新しいシステムがいかに会社組織を病んでいったのか、同社の元人事部員で成果主義を推進する立場にあった城繁幸氏が赤裸々に語る。
(聞き手=ジャーナリスト・岩崎義人)

プロフィール
城 繁幸さん
元富士通人事部・人事コンサルタント

じょう・しげゆき/1973年山口県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通に入社。当時、富士通は他企業に先駆けて成果主義の導入に踏み切っていた。人事担当者として、その導入直後から運営に携わる。2004年春に退社して書き上げた『内側から見た富士通――「成果主義」の崩壊』(光文社)は昨年、ビジネス書ベストセラー第1位となり、大きな反響を呼んだ。現在は人事コンサルタントとして、執筆・講演活動を精力的にこなしている。日本型「成果主義」の確立を模索する次作(単行本)も現在準備中。

成果主義の崩壊はなぜ起きたのか?

管理職を会議室に集めて2時間研修しただけだった

城さんのご著書『内側から見た富士通』は昨年、20万部を超えるベストセラーになりました。

それなりに読んでもらえるかなとは思っていましたし、成果主義について正確な情報をきちんと出さなければいけないなとも考えていました。でも、ここまで多くの人に読んでもらえるとは正直、思っていませんでしたね。

富士通社内の混乱ぶりがリアルに描かれています。反響はどうですか。

全然予想していなかったんですけど、成果主義に関するセミナーの講師の依頼がたくさん舞い込みました。それも、会社側からではなく、成果主義を導入される社員の側からの依頼がすごく多いですね。たとえば労働組合。IT系企業や農協の組合、霞ヶ関のキャリアの勉強会、地方自治体や教職員組合というのもありました。今では学校の先生にまで成果主義を入れようとしていますから、みんな、やっぱり情報に飢えているんでしょうか。大手コンサルタントに依頼しても、そんな小さなセミナーには来てくれないのかもしれません。

成果主義導入に際して、社員に対する説明や研修はないのでしょうか。

富士通の場合、管理職に対しては、人事部が大会議室に集めて研修をしましたね。しかし、パワーポイントを使って2時間ほど説明するだけでした。「こんな制度になります」と。別の企業では、マニュアルを配布しておしまいというケースもありますから、それに比べたらましなのかもしれませんが、評価者である管理職への特別な研修はなかった。これは富士通に限ったことではなく、成果主義を導入した大半の企業でもそうです。評価される立場の社員への研修は熱心ですが、管理職への研修は片手間という感じです。

「目標シート」も書けない上司が部下を評価する

富士通は成果主義の導入から10年で業績が急激に悪化しました。富士通を弱くしたのは成果主義だったと、首脳陣も認める発言をしていますが、どうして失敗したのか。最大の原因はどこにあったのでしょう。

部下を評価する管理職の意識が変わらなかった、ということに尽きると思います。成果主義が導入されたときの管理職というのは、年功序列でそのポストについていたわけで、成果主義の下で管理職に昇格したわけではありません。それなのに、いきなり「今日から成果主義を導入します」ということになってしまった。だから、今さら新しい方法で部下を評価しろと求められても、「そんなことできないよ」というのが本音だったでしょう。年功制の申し子みたいな管理職は、自分の意識をなかなか変えることができないし、そこのところの難しさをほとんどの企業は認識せずに、年功制から成果主義へと切り替えているのではないでしょうか。

研修を受ける程度では、年功序列制度の中で生きてきた管理職は成果主義をなかなか理解できないと。

そうです。たとえば「目標シート」を管理職に書かせてみたら一目瞭然でした。部長や課長の半分以上が、まともな目標シートが書けない。「どうしようか。まあ社員たちが成果主義の主役だからいいや。適当に書いちゃおう」という程度の認識だったのだと思います。でも、それは大きな間違いで、本来は成果主義の主役とは一般社員ではなく管理職のほうで、それを見誤ったまま走り出している企業は非常に多いですね。

成果主義を理解していない管理職が部下を評価すると、どのようなことが起きますか。

目標を公平なハードルで、かつ本来担うべき職務に沿って立てさせることができない。だから評価の際は、目標は脇に置いといて、自分の主観で評価してしまう。最初から与える目標によって、大方の成績が決まってしまうケースも多い。「目標は達成したけれど、やっぱりあなたはB評価」とやってしまうわけです。これでは目標を唯一のよりどころとしている社員は納得できません。

しかし、その評価結果を、上司は部下にフィードバックしなければなりません。

そもそも「なぜ君はBの成績だったか」「どこがどれだけ足りなかったのか」をきっちり部下に納得させられる能力というのは、年功序列時代の管理職には必要なかったわけですから、それを持っていない管理職がとても多い。ところが、評価がA(=達成)かB(=未達成)かで給料は1.5倍から2倍の差がつきますし、翌年の昇給額にも影響します。富士通もそうですが、成果主義の名の下に、昇級昇格に際して、厳しい成績条件を課している企業が多い。つまり、1回でも低い成績をつけられると、次に出世するタイミングが2年くらい先に延びてしまうんです。それほど成績というのは、人生すら左右するほどの重要性を持つようになっている。フィードバックや評価プロセスの公開は必須でしょう。

「管理職>部下」という歪んだ構造から生まれる弊害

「企業は人なり」と言われますが、成果主義でも、まず、管理職の資質が問題になるということですね。一方で、組織の実態に成果主義のシステムが合わなかった、というような問題はなかったでしょうか。

富士通に限りませんが、日本の大手企業では、管理職の人数を増やしすぎたのが原因で正当な評価ができなくなっている、という問題が生じています。年功制の下では基本的に勤続年数に応じてポストをあてがっていきますが、その結果、組織の中でポストをいかに確保するか――ということが次第に難しくなってきた。右肩上がりの時代、毎年企業の成長が続いていたうちはよかったのですが、バブル崩壊後はそれが止まってしまい、社員の数に比べて部長や課長のポストの数が足りなくなってきたんですね。

ポストが足りなくなると、無理矢理新しいポジションをつくったでしょう。

そう。「部長代理」や「担当部長」、「参事」などいろいろですが、もうこれらは管理職とは言えない管理職ですよね。そんな応急手当でどうなったかというと、社員の2、3割が管理職になって、課長1人につく部下は多くて3人から5人、部下がひとりもいないケースまで出てきてしまった。

管理職が多すぎて、部下は少ない。それで成果の正しい評価ができるでしょうか。

私は難しいと思いますね。仮に同じレベルの部下が2人いるとして、その2人に「最大3倍から5倍の差がつく評価をしなさい」と人事部から言われても、そんなことできないですよ。で、どうするかというと、2人ともに当たり障りのない評価をするんですね。だから、一次評価者レベルでの成績を、後からもっと大きな単位で集めて、再調整しないといけない。そういった評価の調整委員会というのは、どこの企業にもありますね。でも社員の最終的な評価を下す評価委員会には、肝心の上司――課長などの中間管理職は出られない。AからBへ格下げをされた社員が文句を言っても、これでは上司はその社員を納得させる話などできるわけがありませんよね。これは構造上の問題です。
評価される本人達にしてみれば、「自分は目標を達成しているのに、誰も見てないじゃないか」ということになる。それでフラストレーションがものすごく溜まって、モチベーションが下がってしまう。これは1万人以上の上場企業で起きやすい、構造的な問題だと思いますね。

社員の成果をきちんと見る視点があるか?

中間管理職には部下の評価を下す本当の権限がない

城さんは人事部員として成果主義の運営に携わってきたわけですが、「成果主義の本質を最も理解していなかったのが、ほかでもない人事部自体だった」と『内側から見た富士通』で指摘しています。

それは、一言で言うと「評価権をどこが持つか」という問題です。これまでの年功制の中では、現場の中間管理職は本当の意味で部下を評価する権限がありませんでした。評価の基準には、すでに決められたものがあったからです。それを誰がつくっていたか――人事部なんですよ。年功制の評価は相対評価だから、人事部は各部署ごとに「A評価は何人、B評価は何人つけてください」などと評価の分布を作成する。要するに評価人数の「枠」ですね。そういう全社一律の基準を人事部がつくって、各管理職に撒いていた。部長や課長はそれを見ながら部下の順位づけをしていたにすぎません。

現場の責任者が部下の成果をきちんと計るという視点はありませんね。

ないですね。でも成果主義を導入して目標管理をやり、それが是正されたかというと、ほとんどの企業ではやっぱり同じで、管理職は部下の成果をきちんと計ることができていません。なぜかというと――富士通での成果主義導入当初はまさにその典型と言えますが――目標管理制度を導入して、目標シートで達成度を評価しているはずなんだけど、実際はその裏で人事部が管理職に評価分布を回してつけさせているからです。年功制のときと全く同じで、「この枠の中に収めなさい」と。社員が目標を達成したかどうかなんて、どうでもいいわけですよ。いろいろ話を聞いた感じでは、成果主義を導入した企業の8割は、こんな感じではと思います。

評価の基準を現場の管理職に渡したくない

成果主義がまともに機能しないにもかかわらず、人事部は評価権に固執する。なぜでしょう?

予算を枠内に収めなければならない、という問題があるから、「評価も枠のなかに収めてください」ということになるのです。さすがに評価分布の考え方は古いというので、もう少しまともな企業になると、人事部が目標管理の評価用マニュアルをつくっています。たとえば、「同業他社がライバル製品を出した場合、その評価のつけ方」などと、細かな項目が書いてある。管理職はこれにしたがって部下の評価をつけなさい、というわけです。でも、評価の基準という意味では、相変わらず人事が握ったままです。

人事部が評価の基準を他に渡したくない、ということでしょうか。

そうなんですよ。私がセミナーなどでこういう話をすると、現役の人事部員たちはまず拒否反応を示しますね。「管理職に評価をさせたら何をつけるかわからない」「あの人たちは全く信用できない」って。だけど、本当に成果主義をやるのなら、社員一人ひとりの成果をどこまでも厳密に計らなければいけないはずです。まず枠をつくっておいて、そこに何人入れればいい、なんていうやり方では誰も納得しませんよ。

人事部よりも、現場で直接、部下の仕事ぶりを見ている管理職のほうが社員の成果を厳密に見ることができると思いますが。

人事部というのは、社員を評価する全社一律の「魔法の公式」をずっと探し求めているようなところがあるんです。でも、そんな公式、売り上げが数値でバシッと出るタクシーの運転手や百貨店の売場担当に対してならあり得るでしょうけど、それ以外のほとんどの職種ではありませんよ。じゃあ誰が社員の成果をいちばん正確に判断できるか?やっぱり現場の管理職が、自分の目で確かめて、アナログで評価するしかないはずなんです。管理職に本当の意味の評価権を持たさないとダメ。今までは「何人にAをつけていいの?」って部長さんが人事部に聞きに来ていたけれど、「何人にA評価をつけるべきか」を部長さんが自分の頭で考えてもらわないと、成果主義というのは絶対にうまくいかないんです。

「成果主義の会社に行きたい」と言う若い世代

これほど問題が多いと、企業が成果主義を導入するのは不可能なことのように思えてしまいます。

確かにそう思えますね(笑)。でも私は、『内側から見た富士通』の中でも、その他の場所でも、成果主義をやめろとは一言も言っていないんです。昨年末にラジオのトーク番組に出演した際、スタッフがサラリーマンに街頭インタビューをしたのですが、そのとき成果主義に肯定的な声が多かった。とくに20代は「ぜひそういう会社に行きたい」「移りたい」と圧倒的。若い世代には成果主義を受け入れる土壌があると思うんですね。

しかし富士通は若手の社員がかなり辞めていったとか。

富士通は電機業界で最初に成果主義を導入しましたが、昨年導入した三菱電機と比べると、倍くらい離職率が高いんです。これは「働いたものが公平に評価される」という謳い文句に反して、実際の成果主義の現場があまりにひどかった、ということの逆証明でしょう。でも私は、成果主義は一時の流行ではなく、どの企業も避けては通れないものだと思っていますし、対応を考えながらうまく付き合っていかなければいけないと思っているんです。

「年功序列制度」の復活はあり得るか?

「目標管理」は課長級以上の管理職がやるべき

今、年功制から成果主義へ切り替えつつある企業も多いと思います。現場でその新しい制度とうまく付き合っていくために、まずやるべきことは何でしょう。

一般の社員よりも、まず管理職から成果主義を導入することです。社員より厳しくやるんです。そうすると、目標が立てられない管理職や、部下がほとんどいない管理職がいるという問題にぶち当たるでしょう。どうするか。たとえば、目標が全く書けないような管理職は、降格しろとかリストラしろとは言わないですけど、少なくとも目標管理の評価者のラインからは外れてもらって、プロジェクトマネジャーを脇からサポートするようなポジションに移ってもらうことです。できたら、それをきっかけに組織の統廃合までやってしまうのがいい。

部下の評価ができない上司は切ってしまうということですか。

そうとも言えるでしょうね。管理職の数を減らして組織をシンプルにしないと、うまくいくものもいかないですから。まずはそこから手をつけて、その後で一般社員にも導入する。この手順は大事だと思います。

では、一般社員の目標管理はどのようにやればいいのでしょうか。

人件費を削減したいという目的なら話は別だけど、組織として高いパフォーマンスを上げたい、という目的から導入するのであれば、「数値目標中心の目標管理」は課長級、あるいは部長級以上の管理職がやるべきで、一般社員は目標管理をやらなくていいと思いますね。なぜかというと、社員の評価を計って報酬に3倍の差をつけるというのなら、当の社員に3倍の差を決定できる「裁量」とか「権限」を与えないとフェアじゃないでしょう。だけど、日本企業の一般社員にそれがあるかというと、まあそんな企業はあり得ない。社員個人の評価は事実上、目標を割り振る段階で、管理職の裁量によって決まります。だから、目標管理制度をどうしてもやりたいのなら、管理職以上でやれというのが私の持論です。

全社のモチベーションの総量は確実に下がる

成果主義を導入した企業で、不可解と思えるほど給料に差がついているケースもあります。少数の1人勝ちの社員が生まれる一方で、大半の社員がやる気を失っている――とも言われます。

仕事の貢献度と比べて給与の差が明らかに大きすぎるな、というケースは多いですね。勝者がぜんぶ持っていくという考え方なのでしょう。でも「優秀な人」と「イマイチな人」を比べたときに、貢献度の差は1.2倍くらいしかないのに、給与は5倍くらい違うというケースが非常に多い。そんなに差はつけるべきではないと、私は思いますね。それで給与を多く受け取った人が、4倍も5倍も仕事の成果を出せるようになるかというと、そうはならないですから。

「イマイチな人」はモチベーションが下がりますね。

低い評価をつけられてしまった人はボーナスが減って、定昇もないわけですから給料だって上がらない。もう完全にやる気がなくなるけど、35歳以上なら転職もままならない。成果主義を導入した企業で、日がな一日ぼうっとしてるだけの人って、けっこう多いんです。でもそういう人は要らないのかというと、そんなことはなくて、じつは「優秀な人」が無事に成果を達成するために縁の下の力持ちになってきた、ということがとても多いんです。ちゃんと役に立ってきたんですね。

低い評価の人はやる気がなくなり、成果主義を入れたら会社全体のモチベーションが落ちた、では大変です。

成果主義を入れると、全社員のモチベーションの総量は確実に下がります。成果主義の下では高い評価と低い評価にそれぞれ一極集中するから、低い評価の人のモチベーションはガクッと下がるんですよね。それに、仕事はチームでやるものですから、もし彼らのやる気がなくなったら「優秀な人」にも負荷がかかってきますね。でも、そういう「優秀な人」は転職しようと思えばできる(笑)。結局、会社は有能な社員まで失うことになるんです。

年功制ではビジネスモデルの変化に対応できない

中には、従来の年功序列制度でうまくいっている企業もあります。そんな企業にも将来的には成果主義が導入されることになるでしょうか。

日本型経営で伸びているトヨタのような企業であっても、有望な若手の選抜や人材の育成を考えれば成果主義的な要素を導入しないとダメかな、という気はします。実際、トヨタは2003年度のベースアップを早々に見送っているんです。定期昇給制度を廃止しようという布石ではないでしょうか。私はそんな気がすごくしています。前年度の成績に連動して昇給額を決める方式に変えるんじゃないかと思いますね。

成果主義を考えるとき、年功制とどちらが優れているかという二者択一的な議論になることがあります。最近では、年功制の復活も言われるようになってきましたが、どちらが、より現実的な手法だと思いますか。

私は年功制度のほうが優れていると思います。ただし、単純に「単品の制度」として見れば、の話ですけど。たとえば、これはある大手出版社のケースですが、その会社は55歳まで1円の差もつけないという究極の年功制をとっていた。それで社員に不満があったかというと、なかったんですね。大手出版社で給与水準が高いせいかもしれませんが、しかし、そういう会社でも成果主義を導入した。社長に「なぜですか」と聞いたら、「出版不況で売り上げが落ちているのに、年功制ではそういうビジネスモデルの変化に全く対応できない」と言うんです。何とかしようと編集長たちを集めて議論しても、いい案がさっぱり出てこない。ところが新入社員と酒を飲んだときに話を聞いたら、次々と面白いアイデアが出てくる。「だけど、ウチの今の年功制度だと彼らが編集長になるのは25年後だな」って(笑)。そういうことです。だからせめてその期間を半分にしようということで、部分的に成果主義を入れ始めているというのですが、年功制と成果主義の特徴が端的に表れているエピソードですよね。

保守的な「ムラ社会」に成果主義は馴染むか?

ゆるやかなアナログの目標管理制度がいい

「富士通は極めて年功的で保守的な『ムラ社会』的組織だった……「成果主義」と「ムラ社会」は本質的に水と油だ」。そう指摘していますね。

ムラ社会にもいい面はありますけど、これだけは言えるのは、現在の「数値目標をベースにした個人偏重の成果主義」には絶対に合わない、ということです。だけど、ムラ社会を解体して、理論どおりの成果主義を実行すると、米国企業と同じになってしまうし、日本企業の伝統的なチームワークの強さを失うことにもなりかねない。そこまでする必要はないわけで、「穏やかなムラ社会」に移行しながら成果主義も維持できると思うんです。それを実現するための成果主義として、ゆるやかな目標管理をベースとしたものが考えられますね。

どのように目標管理制度を行うのですか。

要は、アナログでやることです。たとえば、まず部長が目標を公開するんです。「ウチの部は、10億円の売上を目標にします。みなさん、がんばってください」というように。それで部下のAさんならAさんに「君の方向性は新規顧客の開拓ですよ」と指示する。これだけでいい。その代わりに、期末にやる評価面談は1時間以上かけてしっかりやる。

Aさんの売り上げが伸びなかったら?

期末のAさんの売り上げが、たとえば1億円しかなく、ほかの部員と比べても低かったとします。ただ、その中でも、同業他社が押さえていたところに食い込んだ、という実績があったりすれば、それは数字以上の価値があるわけですよね。単純に「Aさんは3億円」とかいう数値目標を立てていたら評価はBになるかもしれないけれど、このアナログのやり方でいけば評価はSA(=仕事ができるスーパー社員)ということになるでしょう。そういうことをやってほしいのです。それをやるためには、やっぱり、人事が一律に評価権を管理していてはできません。話がまた人事部の問題に戻ってきてしまいましたけど(笑)。

人事部の仕事量が増えているのはおかしい

そもそも評価権を現場の管理職に移せば、人事部の業務はそのぶん軽減されるはずです。でも実際は成果主義の導入で人事部門の仕事量が増えているケースが多いです。

それがおかしいんですよ。現場の社員の働きぶりを見てもいないのに、人事部が評価をすること自体が間違っているんですね。評価権を渡す気がないから、仕事量だって増えてしまう。

評価権を手放しても問題はない。社員が納得できる成果主義を実現するためには、むしろそうしなければならない、ということですね。

評価権がなくなると自分たちの存在が否定されるように思っている人事部が多いですけど、仕事量で考えると、査定業務は全体の1割程度です。人事の仕事の大部分は、会社に来ない人がいるからなんとかしてくれとか、そういう泥臭い現場仕事。経営トップの意向を受けて制度をつくっている人事部であれば、組合と交渉したり、採用計画や人員配置計画を作成したりする大枠の業務もあります。だから査定業務をやらなくても仕事がなくなるわけではない。繰り返しますが、今までみたいに人事部が社員の評価をしているようでは、どんな成果主義も成功しない。これだけは間違いなく言えると思います。

(インタビューは1月17日、東京・渋谷の「bar cacoi.」にて)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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