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特別インタビュー

やるだけでなく、やりきる仕組み
“働き方改革”でIT業界の常識を覆す
SCSKの「スマートワーク・チャレンジ」とは

河辺 恵理さん(SCSK株式会社 執行役員 人事グループ 副グループ長)

SCSK株式会社 執行役員 人事グループ 副グループ長 河辺恵理さん

かつては時代の先端で輝いていたIT業界も、近年はイメージの悪化で逆風にさらされています。最大の問題は長時間労働でしょう。深夜にまで及ぶ残業や休日出勤は当たり前、仕事によっては客先に常駐し、交代制で24時間、システムの監視にあたらなければなりません。そんな業界で“平均月間残業時間20時間、有給休暇取得率100%”を目指し、すでにその目標をほぼ達成しているのが、日本の人事部「HRアワード2015」で企業人事部門最優秀賞を受賞したSCSK株式会社です。受賞対象となった「スマートワーク・チャレンジ」を中心とする働き方改革の取り組みは、どのようにして進められたのか。同社執行役員で人事グループ副グループ長の河辺恵理さんにうかがいました。

Profile

かわなべ・えり/1986年、住商コンピューターサービス株式会社(現SCSK株式会社)入社。流通業界、金融業界を中心とした大企業向けのシステム開発、営業、プロジェクトマネージャー、海外パッケージソフトの日本導入などを担当。ライン職を歴任。2006年4月より社内「女性活躍プロジェクト」へリーダーとして参画。2013年4月より人事グループ 人材開発部長として全社の人材育成を担当。2014年4月より同社初の女性執行役員として人事グループ 副グループ長就任、現職。同社の目指す「働きやすい やりがいのある会社」づくりを担当する。ダイバーシティ・女性活躍、ワークライフバランス、人材開発・キャリア支援、健康経営などのさまざまな施策を推進。

困難な目標に挑まなければ具体的な行動変革につながらない

最優秀賞受賞、おめでとうございます。表彰式では、「何よりうれしいのは、会社全体において、以前よりも活力と明るさが増したことです」というコメントが印象的でした。その“以前”の状況から、まずお話しいただけますか。

SCSKは2011年の合併を機に「夢ある未来を、共に創る」という経営理念のもと、「人を大切にします」との約束を掲げ、「働きやすい、やりがいのある会社」づくりを追求してきました。裏を返せば、以前は必ずしもそうではなかった、ということです。ご存じのように、IT業界、特に私たちのようなシステムインテグレーターの業界は、とにかく残業や休日出勤が多い。弊社も以前は、長時間労働が常態化していました。システムは24時間365日稼働でということで、夜間の問い合わせや作業依頼にも、基本的に対応しなければなりません。結果として「夜遅くまでいる社員」「休まない社員」が「良い社員」と思われ、ますます帰りづらく、休みづらくなってしまう。徹夜や会社に寝泊まりしている人もいましたが、私自身もずっとそういう環境で働いてきたので、それが当たり前だと思っていました。そしてもう一つ、IT業界では、優秀な技術者ほど難しい仕事を独りで抱え込んでしまうため、ジョブローテーションやワークシェアが難しく、休めません。この“独り抱え”の習慣も深刻な問題でした。

以前はそれが当たり前だったということですが、危機感を持ったきっかけは何ですか。

09年にトップの中井戸(信英会長)が親会社の住友商事から合併前の住商情報システムに、会長兼社長として赴任しました。当時はまだ、晴海の手狭な旧オフィスで、省エネで消灯するお昼の休憩時間には、みんな自席に突っ伏して寝ていました。しかもその机の幅が90センチと狭かった。中井戸はそれを見て、着任するや否や、強い危機感に駆られたそうです。「この労働環境はありえない。インテリジェンスとはかけ離れている」と。それが、すべての始まりでした。

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