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フロンティアリーダーに聞く

21世紀のイノベーション競争を勝ち抜くために
組織に“非連続な変化”を起こす竹中流リーダーシップの極意とは

竹中 平蔵さん(慶應義塾大学総合政策学部 教授/グローバルセキュリティ研究所 所長)

慶應義塾大学総合政策学部 教授/グローバルセキュリティ研究所 所長 竹中平蔵さん

現場主導で地道な改善・改良を重ね、品質や生産性を向上させる取り組みは、かつて日本企業のお家芸でした。しかし今、企業が成長するために求められているのは、改善・改良を超えた革新、つまりイノベーションです。イノベーションとは、それを牽引するに値する強いリーダーシップの下で起こるもの。日本企業におけるリーダーシップの不足はかねてから指摘されるところですが、慶應義塾大学の竹中平蔵教授は「時代背景や各企業の置かれている状況によって、求められるリーダーシップのタイプは異なる」とおっしゃいます。では、今求められるリーダーシップとは何なのでしょうか。組織の将たる人材をどう選び、育てていけばいいのでしょうか。自らも国務大臣として経済再生の陣頭指揮を執られた竹中先生に、古今東西のリーダーの名言を交えながら語っていただきました。

Profile

たけなか・へいぞう/1951年和歌山市生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年より経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣などを歴任。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授、産業競争力会議・国家戦略特別区域諮問会議メンバー。著書に『400年の流れが2時間でざっとつかめる 教養としての日本経済史』(KADOKAWA)、『不安な未来を生き抜く知恵は、歴史名言が教えてくれる』(ソフトバンククリエイティブ)、『大変化 経済学が教える2020年の日本と世界』(PHP研究所)などがある。

リーダーはバルコニーに駆け上がって全体を俯瞰せよ

竹中先生は “イノベーションを牽引するリーダーシップ”の重要性を強く叫ばれ、大学での教育活動以外にも、実践的なリーダー育成プロジェクトを数多く手がけていらっしゃいます。社会・経済の動向を踏まえた上で、日本企業のリーダーには何が求められるとお考えですか。

世の中には多種多様な企業があり、リーダーにもいろいろなタイプがいますから、どれがより優れているかといった議論にはあまり意味がありません。昔でいえば、農村で貴重な水をどうやって村人それぞれの田んぼに分配するかを決めるときのリーダーと、遊牧民族の長のように、砂漠の真ん中で一団を率いてどっちへいけばいいのかを決めるときのリーダーとでは、タイプが自ずと異なります。前者の場合は、コンセンサスが求められますから、調整の利く長老や兄貴分のようなリーダーが向いていますが、後者では、コンセンサスは二の次です。いくらみんなが丸く収まっても、その決断自体が間違っていれば、全滅の危機に瀕するわけですからね。そういうときはやはり、突出した能力を持つ人が、ぐいぐいと引っ張っていったほうがいい。どちらが優れているかではなく、その状況に応じて、最適なリーダーを選ばなければいけません。

日本経済が右肩上がりで成長していた頃は、どちらかというと、兄貴分型のリーダーが大きな役割を果たしていましたが、時代は大きく変わりました。4年前に英エコノミスト誌が発表した『MEGA CHANGE:THE WORLD IN 2050』という本では、「21世紀はシュンペーター的イノベーションの競争の時代」だとしていました。シュンペーターは、イノベーションが資本主義のエネルギーの源泉であることを示した経済学者で、「馬車を何台つないでも自動車にはならない」という名言を残しています。つまり、イノベーションの本質は“非連続な変化”にあるということです。イノベーションの時代のリーダーは、そうした非連続な変化を組織に持ち込める人でなければなりません。みんなの言い分を受け入れて丸く収めようとする、兄貴分のリーダーではいけないのです。では、どのようなタイプなのかというと、真っ先に思い出すのはイギリスのサッチャー元首相です。彼女が興味深い言葉を残しているんですよ。「リーダーは好かれなくてもよい、しかし尊敬されなければならない」と。ご存じのように、彼女は、ドラスティックな、まさしくそれまでの政治の流れとは非連続な政策を打って、イギリスを復活させたわけですが、その過程では、既得権に固執する人々とのすさまじい摩擦や闘争がありました。その意味では、まったく好かれてはいなかった。しかし、リスペクトされていたことは間違いありません。

この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.4」でご覧になれます。

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